はじめに
室内空気汚染問題
シックハウス症候群
厚生労働省
文部科学省
国土交通省
環境省
東京都
日本塗料工業会
経済産業省
今後の規制とTVOC
健康・環境配慮形塗料の選定基準

はじめに
目覚ましい科学技術の発展に伴い、人類の生活を豊かで快適なものにした現代ですが、その反面、自然を破壊し環境への負荷は地球環境にまで及んでいます。
地球の温暖化、酸性雨、生態系の破壊、資源の枯渇、廃棄物の増大、大気汚染、水質汚染、土壌汚染など環境に対する問題が次々とクローズアップされてきました。
このような状況の中で近年の住宅における室内空気汚染による人体への影響が大きく取り上げられてきました。

室内空気汚染問題
室内空気汚染問題に対する行政の主な指針としては、厚生労働省の「室内空気汚染に係るガイドライン」によるホルムアルデヒドをはじめとする化学物質の室内濃度指針値の策定。文部科学省の「学校環境衛生の基準」の一部改訂として、学校工事後のホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼンの濃度測定、及びその値を指針値以下とするように義務づけた。さらにこのたび国土交通省の改正建築基準法(平成5年7月施行)により、住宅内装材が規制になり、塗料及び仕上塗材ではホルムアルデヒドが規制の対象になります。これを受け経済産業省は、JISの整備見直しが行われました。

シックハウス症候群
新築・改築後の住宅において、住宅の高気密化や、使用された建材・内装等から放散する化学物質による室内空気汚染等により、居住者に様々な体調不良が生じている。症状が多様で、未解明な部分が多く複合的要因が考えられシックハウス症候群と呼ばれている。

症状は
● 目がチカチカする。
● 頭痛・めまい・吐き気。
● 鼻水・くしゃみ・せき・のどの痛み。
● 気分が悪い。
   
要因
● 住宅に使用されている建材、家具、日用品等から様々な化学物質が発散。
● 住宅の気密性が高くなった。
● ライフスタイルが変化し換気が不足しがち。

シックハウス症候群は
医学的に定義された病名ではありません。屋外にいるときは症状がないのに、住宅やビルの中に入ったとき体調不良の症状を訴える。これらを総称して用いられる名称です。
シックハウス症候群の原因の一部としてホルムアルデヒドやVOC(トルエン、キシレン等)と言われる揮発性の有機化合物があります。VOCとはVolatile(揮発性)Organic(有機)Compounds(化合物)の頭文字をとったものです。

厚生労働省
厚生労働省では、平成12年4月よりシックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会で、室内空気汚染物(有害化学物質)について、下記の13物質がガイドライン(指針値)として示されています。

●有害化学物質の室内濃度指針値(↓テーブル)
揮発性有機化合物 室内濃度指針値 主な用途
ホルムアルデヒド 100μg/m3(0.08ppm) 合板、パーティクルボード、壁紙用接着剤等に用いられるユリア系、メラミン系、フェノール系等の合成樹脂、接着剤、一部ののり等の防腐剤
トルエン 260μg/m3(0.07ppm) 内装材等の施工用接着剤、塗料等
キシレン 870μg/m3(0.20ppm) 内装材等の施工用接着剤、塗料等
パラジクロロベンゼン 240μg/m3(0.04ppm) 衣類の防虫剤、トイレの芳香剤等
エチルベンゼン 3800μg/m3(0.88ppm) 内装材等の施工用接着剤、塗料等
スチレン 220μg/m3(0.05ppm) ポリスチレン樹脂等を使用した断熱材等
クロルピリホス 1μg/m3(0.07ppb)但し小児の場合は0.1μg/m3(0.007ppb) しろあり駆除剤
フタル酸ジ-n-プチル 220μg/m3(0.02ppm) 塗料、接着剤等の可塑剤
テトラデカン 330μg/m3(0.04ppm) 灯油、塗料等の溶剤
フタル酸ジ-2-エチルへキシル 120μg/m3(7.6ppb) 壁紙、床材等の可塑剤
ダイアジノン 0.29μg/m3(0.02ppb) 殺虫剤
アセトアルデヒド 48μg/m3(0.03ppm) ホルムアルデヒド同様一部の接着剤、防腐剤等
フェノブカルブ 33μg/m3(3.8ppb) しろあり駆除剤
総揮発性有機化合物量(TVOC) 暫定目標値400μg/m3  
(ここまで)
※25℃の場合 ppm:100万分の1の濃度、ppb:10億分の1の濃度

●厚生労働省の室内環境に関する規制の要点
・室内濃度指針値以下が望ましい。
・VOC測定及び指針値以下の義務付けではない。
・ガイドラインは目標基準で規制ではない。
・室内のみが対象。(室外は対象外)

ppm とは
濃度の単位100万分の1を1ppmという。ホルムアルデヒド0.08ppmは1,000L中に0.08ml。

室内濃度指針値とは、その濃度の空気を一生涯にわたって呼吸しても問題ないであろう、またこの値以下が望ましいとする値。

ホルムアルテヒドは刺激臭の強い無色の化学物質で、室温では気体として存在します。殺菌作用があり、防腐剤、合板などの接着剤の原料、繊維の縮み防止加工剤など幅広い用途に用いられている物質です。

文部科学省
文部科学省では、平成14年2月より「学校環境衛生の基準」の一部改定を各都道府県教育委員会等に通知しています。

●文部科学省の室内環境に関する規制(改定)の要点
定期環境衛生検査 ・・・・・ 教室の空気の検査事項として
・毎学年1回の定期検査の実施。
・ホルムアルデヒド、トルエンについて濃度測定実施。
 キシレン、パラジクロロベンゼンについては必要に応じ実施。
・判定基準値は厚生労働省の指針値に準ず。(上記の数値以下であること。)
事後措置は
・換気を励行する。
・その発生の原因を究明する。
・発生抑制措置をとる。

臨時環境衛生検査
・コンピュータ等新たな学校用備品の搬入等により発生の恐れがあるときに実施。
・新築・改装・改修工事後にホルムアルデヒド測定を義務付け。

基準値以下であることを確認の上で引き渡し

国土交通省
建築基準法が平成14年7月に一部改正(15年7月より施行)され、その第28条の2に「居室を有する建築物は、その居室内に於いて政令で定める化学物質の発生による衛生上の支障がないよう、建築材料及び換気設備について政令で定める技術的基準に適合するものとしなければならない」と制定されました。これを受け、技術的基準として「建築基準法施行令の一部を政令」が公布される。これに伴い国土交通省告示により、それぞれ第一種、第二種及び第三種のホルムアルデヒド発散建築材料が定められました。また関連のJISが改正されました。

発散と拡散
・発散 建築基準法施工令及び告示で用いられる用語
・拡散 JISで用いられている用語。

事実上同意語
●規制対象工事
・公共、民間を問わず居室の内装工事。
●規制対象物質
・ホルムアルデヒド、クロルビリホス(しろあり駆除剤)
●規制対象材料
・木質建材(合板、木質フローリング、パーティクルボード、MDFなど)、壁紙、ホルムアルデヒドを含む断熱材、接着剤、塗料、仕上塗材など。
●規制対象範囲
・「居室」の内装仕上げ、天井裏における面的な部分。

増築、改装、大規模の修繕大規模の模様替え工事にも適用。

対象外
柱等の軸材や回り縁、窓台、巾木、手すり等の造作部分、建具枠、間柱、胴縁、部分的に用いる塗料(タッチアップ等)、接着剤等。

●規制対象居室
居間、寝室、事務室、会議室、工場作業場、店舗の売り場、厨房、教室、職員室、応接間、食堂等。

居室とは居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室をいう。

対象外
玄関、廊下、トイレ、浴室、納戸、更衣室、事務所の給湯室等。

対策1
①建築材料の区分

内装仕上げに使用するホルムアルデヒドを発散する建材こは、次のような制限が行われます

(↓テーブル)
建築材料の区分 ホルムアルデヒドの発散 JIS、JASなどの 表示記号 内装仕上げの 制限
チャンバー法 テシケータ法
建築基準法の
規制対象外 5μg/㎡h 0.12以下mg/L F☆☆☆☆ 制限なしに使える
第3種ホルムアルデヒド
発散建築材料 5~20μg/㎡h 0.12~0.35mg/L F☆☆☆ 使用面積が制限される
第2種ホルムアルデヒド
発散建築材料 20~120μg/㎡h (0.35~1.8)mg/L F☆☆
第1種ホルムアルデヒド
発散建築材料 120μg/㎡h超 (1.8以上)mg/L  旧E2、Fc2又は表示なし 使用禁止
備  考 対象となる建材 塗料限定の測定法    

チャンバー法…JIS A1901スモールチャンバー法→ホルムアルデヒドの放散速度測定
デシケータ一法…JIS K5601塗膜からの放散成分分析→ホルムアルデヒドの放散量測定

μg(マイクログラム)
100万分の1gの重さ。放散速度は1μg/㎡hは建材1㎡につき1時間当たり1μgの化学物質が発散されることをいいます。

建築物の部分に使用して5年経過したものについては、制限なし。

②第2種・第3種ホルムアルデヒド発散建築材料の使用面積の制限

第2種ホルムアルデヒド発散建築材料(F☆☆)及び第3種ホルムアルデヒド発散建築材料(F☆☆☆)については、次の式を満たすように、居室の内装の仕上げの使用面積を制酸します。

N2S2 + N3S3 ≦ A
第2種分   第3種分    

S2:第2種ホルムアルデヒド建築材料の使用面積
S3:第3種ホルムアルデヒド建築材料の使用面積
A:居室の床面積

(↓テーブル)
居室の種類 換気回数 N2 N3
住宅等の居室(※) 0.7回/h以上 1.2 0.20
0.5回/h以上0.7回/h未満 2.8 0.50
上記以外の居室(※) 0.7回/h以上 0.88 0.15
0.5回/h以上0.7回/h未満 1.4 0.25
0.3回/h以上0.5回/h未満 3.0 0.50

※ 住宅等の居室とは、住宅の居室、下宿の宿泊室、寄宿舎の寝室、家具その他これに類する物品の販売業を営む店舗の売場をいいます。上記以外の居室には、学校、オフィス、病院など他の用途の居室が全て含まれます。

対策2
ホルムアルデヒドを発散する建材を使用しない場合でも、家具からの発散があるため、原則として全ての建築物に機械換気設備の設置が義務付けられます。

(↓テーブル)
居室の種類 換気回数
住宅等の居室 0.5回/h以上
上記以外の居室 0.3回/h以上

換気回数とは
1時間当たり居室内の空気が入れ替わる回数。0.5回は居室内の空気の半分が入れ替わること。

対策3
機械換気設備を設ける場合には、天井裏、床下、壁内、収納スペースなどから居室へのホルムアルデヒドの流入を防ぐため、次の①~③のいずれかの措置が必要となります。収納スペースの建具に空気取り入れ口などを設計、かつ、居室と一体的に換気を行う部分については居室とみなされ対策Ⅰの対象となる。

(↓テーブル)
①建榔こよる措置 天井裏などに第1種、第2種のホルムアルデヒド発散建築材料を使用しない(F☆☆☆以上とする)
②気密層、通気止めによる措置 気密層又は通気止めを設けて天井裏などと居室とを区画する。
③換気設備による措置 換気設備を居室に加えて天井裏なども換気できるものとする。

環境省
環境省では平成12年5月に循環型形成推進基本法のひとつとして、グリーン購入法(国等による環境物品等の調達の推進に関する法律)が制定されました。
同法は国の機関や地方公共団体、企業、国民に環境負荷の小さい環境物品等の調達・購入を推進するとともに環境物品等に関する適切な情報・提供を促進することにより、持続可能な社会の構築をめざすものです。
平成13年2月、国等の各機関で重点的に調達を推進する特定調達品(グリーン商品101品目)が14分野にわたり公示されました。平成14年4月から塗料関係の品目として公共工事の分野において「下塗り塗料(重防食)」(鉛・クロム等の有害重金属を含む顔料を配合していないこと)が指定されました。

東京都
環東京都環境局より平成14年7月、化学物質の子どもガイドライン(鉛ガイドライン塗料編)が示されました。子どもへの有害性が疑われる化学物質を選定し健康への影響を未然に防止するために講じられたガイドラインです。
都民・事業者及び子どもが多く利用する施設の管理者が代替品への転換や代替物質がない場合は、使用量を抑制する方策に向けた内容としています。

●概要
子どもが多く利用する施設や遊具の塗装には、鉛フリーの塗料を使ってください。
都は鉛フリー塗料の積極的な利用をお願いしていきます。
製造事業者は鉛フリー製品であることを表示し、鉛フリー塗料の使用拡大を図ってください。
子どもが多く利用する施設の管理者は、遊具や建築物の上塗り塗料及び下塗り錆止め塗料等には鉛フリー塗料を使ってください。
子どもが多く利用する施設の設計者は、塗料には鉛フリー塗料を指定してください。
子どもが多く利用する施設では、塗膜の剥離がないことを確認してください。
(鉛フリー塗料として、塗膜中の鉛の含有量を0.06%以下に設定)
●塗り替えをする時は
既に塗られている塗料の成分や鉛の含有量を確認してください。
シートを張る板張り防護など塗膜片の飛散や落下による周辺への汚染防止対策を行ってください。

日本塗料工業会
(社)日本塗料工業会では以下のように室内建築塗料の目標基準を設定しています。

(↓テーブル)
塗料設計条件 エマルション塗料 溶剤系塗料
TVOC l%以下 –
芳香族来溶剤 0.1%以下 1%以下
アルデヒド類 0.01%以下 0.01%以下
重金属類(鉛・クロム等 0.05%以下 0.05%以下
発癌性物質、生殖毒性物質、変異原性物質 0.1%以下 0.1%以下
感作性物質 0.1%以下 0.1%以下

注)
1.重金属類とは、鉛、クロム、カドミウム、砒素、水銀とする。
2.アルデヒド類はホルムアルデヒド、アセトアルデヒドを対象とする。
3.各項目に対する物質の濃度は塗料重量に対する物質重量%とする。
またこの場合の塗料とは塗装状態(例えばシンナーで希釈したもの)とする。
従ってシンナーを使用する場合はその組成も特定する必要がある。
4.VOCは標準圧力で、沸点又は開始点が260℃以下の化学物質とする。
5.TVOCは組成中の全てのVOCの合計値とする。
6.芳香族系溶剤は、VOC対象でその骨格中に芳香族環を一つ以上含有する溶剤。

経済産業省
 室内空気汚染の対象となる建築材料のJISを整備し、平成15年3月にホルムアルデヒドに関する規定が大幅に見直しされました。

規制対象外になるJIS製品、F☆☆☆☆表示となり使用制限なし
規制対象外(塗料16品種)

(↓テーブル)
JIS K 5431 セラックニス類 JIS K 5654 アクリル樹脂エナメル
JIS K 5531 ニトロセルロースラッカー JIS K 5656 建築用ポリウレタン樹脂塗料※
JIS K 5533 ラッカー系シーラー JIS K 5660 つや有り合成樹脂エマルションペイント※
JIS K 5535 ラッカー系下地塗料 JIS K 5663 合成樹脂エマルションペイント及びシーラー
JIS K 5581 塩化ビニル樹脂ワニス JIS K 5668 合成樹脂エマルション模様塗料
JIS K 5582 塩化ビニル樹脂エナメル JIS K 5669 合成樹脂エマルションパテ
JIS K 5583 塩化ビニル樹脂プライマー JIS K 5960 家庭用屋内壁塗料
JIS K 5653 アクリル樹脂ワニス JIS K 5670 アクリル樹脂系非水分散形塗料(新規)

JISの内容
ホルムアルデヒド系防腐剤、ユリア系樹脂、フェノール系樹脂及びメラミン系樹脂のいずれをも含まないもの。
ホルムアルデヒド放散量0.12mg/L以下。

※現在のところ、JISマーク表示制度は適用されていません。

規制対象となり、第1種ホルムアルデヒド発散材料となる塗料及び仕上塗材
ただし、ホルムアルデヒドに関する品質規定に該当するものはF☆☆~F☆☆☆☆マークが表示できる。
規制対象(塗料11品種)

(↓テーブル)
JIS K 5429 アルミニウムペイント JIS K 5621 一般さび止めペイント
JIS K 5511 油性調合ペイント JIS K 5667 多彩模様塗料
JIS K 5516 合成樹脂調合ペイント JIS K 5961 家庭用屋内木床塗料
JIS K 5562 フタル酸樹脂ワニス JIS K 5962 家庭用木部金属部塗料
JIS K 5572 フタル酸樹脂エナメル JIS K 5970 建物用床塗料(新規)
JIS K 5591 油性系下地塗料    

JISの内容
ホルムアルデヒド放散量 1.8mg/L以下F☆☆
ホルムアルデヒド放散量 0.35mg/L以下F☆☆☆
ホルムアルデヒド放散量 0.12mg/L以下F☆☆☆☆

規制対象(仕上塗材5種顆)

(↓テーブル)
JIS A 6909 建築用仕上塗材

・内装薄塗材E・内装厚塗材E・軽量塗材・複層塗材E・防水形複層塗材E
内装用の仕上塗材で、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂及びホルムアルデヒド系防腐剤の使用していないものはF☆☆☆☆マークが表示できる。

今後の規制とTVOC
今回の建築基準法の一部改正の中で次のような付帯決議があります。「屋内空気汚染による健康障害が生ずると認められる化学物質については、全て規制対象とするよう、室内空気中の化学物質の濃度の実態や発生源、放散量等の調査研究を進めその結果の得られたものから、順次規制対象にすること。」これは、近い将来に厚生労働省のリストから順次規制対象品目が出されると考えられます。ですからVOCの総量(TVOC)が出来るかぎり低い塗料が良いことは明白です。

健康・環境配慮形塗料の選定基準
ホルムアルデヒド放散等級分類が規制対象外の製品(F☆☆☆☆表示品)を選ぶ。
水系塗料ではTVOCが日本塗料工業会の目標基準である1.0%以下の製品を選ぶ。
下塗、上塗ともに鉛・クロム化合物を含まない製品を選ぶ。

1. シックハウスについて
2. 住宅に関係する化学物質と健康影響との関係
3. 化学物質の室内環境濃度の基準について
4. 各種建築資材とそこから放出が考えられる化学物質の関係
5. 安全な塗装・施工について
6. 塗料、塗装仕様、施工方法の選定
7. 塗装時・塗装終了後の注意
8. ホルムアルデヒド規制について

1.シックハウスについて

1-1.シックハウス問題とは
新築の住宅に入居した人や住宅を改修した後に体調を悪くしたということを訴える人が増えてきています。これは、建材に化学物質が使われていることや住宅の機密性を高くしたために室内の化学物質の濃度が高くなった影響と言われています。

1-2.シックハウスの症状と要因
シックハウスと言われる症状は、体調不良や皮膚障害、自律神経失調など多様であり、必ずしも特定の症状として現れないため総称的に「シックハウス症候群」と呼ばれています。これらの原因となる化学物質は、合板、接着剤、塗料、絨毯、畳、防蟻剤などから放出されると言われていますが、実際にはどのような物質が原因となっているかを明確にする事は難しいのが現状です。

2.住宅に関係する化学物質と健康影響との関係
住宅に関連する化学物質の健康への影響は次のようなものが考えられます。

2-1.急性中毒
化学物質に短期に曝された時に生じる健康影響で、塗装時の溶剤による中毒などのように高い濃度に曝された場合にすぐに起きる影響です。溶剤などによる中毒の場合には、目やのどの痛み、呼吸困難、めまい、頭痛、吐き気などが起き、ひどい場合は失神することがあります。

2-2.感作性(アレルギーを引き起こす性質)
住宅に関係するもののうち「かび」「ダニ」などがアレルゲン(アレルギーの原因となるもの)となりますが、化学物質にもアレルギーなどを引き起こすものがあります。アレルギーは誰にでも起こるものではなく、体質や体調により影響が違って現れます。 アレルギーの症状として、皮膚ではかゆみや湿疹、呼吸器では喘息などとして現れます。化学物質としてホルムアルデヒド、ある種の殺虫剤などが知られています。

2-3.化学物質過敏症
ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン等のVOC(揮発性有機化学物質)、殺虫剤、可塑剤などの化学物質に大量に曝されたり、又は少しでも継続して長期間暴露することによって引き起こされると言われています。この場合も誰にでも発症するのではなく、体質などにより影響の出方が異なると言われています。症状として、自律神経異常、皮膚障害、肩こり、頭痛、吐き気など多様な形で現れてくると言われています。

2-4.臭気の影響
臭気も室内環境の対応すべき問題としては重要です。人が感知する化学物質による臭気の感知は、化学物質それぞれにより異なり、それらの化学物質の健康に与える濃度との関係で注意が必要です。例えば、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン等では臭気が無くても影響を与える領域に入り、臭気を感じたときには既に室内濃度指針値以上の範囲に入っているものがあります。又、逆に臭気があっても危険でない場合もあります。中には臭気に過敏なため、特定の臭気があるというだけで嫌悪を感じてそこに住めない人もいます。

3.化学物質の室内環境濃度の基準について

シックハウス対策においてはその要因となる化学物質の室内濃度が問題となります。このために、厚生労働省はホルムアルデヒド、トルエン、キシレン等13物質に対して、人が健康に住めるための目安となる室内濃度指針値を設定しています。

〈室内濃度指針値設定物質〉↓枠で囲む
~ココカラ~
ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロルベンゼン、エチルベンゼン、
スチレン、クロルピリホス、フタル酸-n-ブチル、テトラデカン、
フタル酸-2-エチルヘキシル、ダイアジノン、アセトアルデヒド、フェノカルブ
~ココオコマデカラ~

又、これら特定の物質だけではなく揮発性有機化学物質の総量(TVOC)についても目標値を設定しています。
シックハウス問題に関するVOCは、特定の化学物質以外でも健康影響が考えられるため、総合的にTVOCとして管理することが必要と考えられるために提案されたものです。
※TVOC:Total Volatile Organic Compounds(総揮発性有機化学物質)

4.各種建築資材とそこから放出が考えられる化学物質の関係

4-1.各種資材と化学物質
建築資材にはいろいろな化学物質が使用され、住宅工事が完了した後でも微量に室内に放出されるものがあります。通常新築、改築ではいくつかの工事が行われますので、健康影響が現れた場合には、どの様な工事を行ったかの情報を取り、放散される可能性のある化学物質を調べ、どの素材や工事が関係しているかを判断する必要があります。

4-2.塗料の種類と化学物質
塗料は多数の化学物質を使用しており、塗装時及び塗膜になってからの化学物質の放散はそれぞれ異なります。建築用に使用する場合は、その組成物質から放散される物質の人への影響を注意して考え、採用する塗料や塗装方法を注意深く検討し、施工する必要があります。
塗料中に含まれる有機溶剤は、VOCとして特に問題になりますが、実際は溶剤の種類毎に有害性が異なっています。塗料の種類は大別して、溶剤系と水性系に分けられ、それぞれの塗料が含有する有機溶剤量は、下表のようになります。現在では、住宅の内部・外壁用として有機溶剤量が少ないエマルション系塗料が多く使用されています。

〈溶剤系塗料〉↓テーブル
有機溶剤量 塗料の種類
非常に多量 溶剤系シーラー類
多量 ラッカー類、ビニル樹脂系塗料、ウレタン樹脂系塗料
中程度 合成樹脂調合ペイント、アルキド樹脂塗料
非水分散系塗料、低臭非水分散系塗料

〈水性系塗料〉↓テーブル
有機溶剤量 塗料の種類
少量 水溶性系塗料
ごく少量 エマルション系塗料

5.安全な塗装・施工について

5-1.現場塗装と建築資材塗装
建築資材塗装の場合、工場で塗装され充分に塗膜が硬化していれば、建築現場でのVOCの放散は非常に小さいと考えられます。しかし、塗料の種類、素材、塗装仕様、塗装工程、設備条件などにより建築資材からのVOCの放散状況が異なります。工場塗装での焼付乾燥が不充分だったりすると、ホルムアルデヒドが発生したり、塗料中に残存している未反応のモノマーなどが、それらの資材を使用した室内などに放散されることがあります。
現場塗装の場合、VOCの発生が現場で起こる事になり、工場塗装に比べてリスクは大きくなります。塗装時の換気のみならず、塗装後の換気に充分気をつける必要があります。

5-2.新築塗装と改修塗装
新築現場での内装塗装工事は以前に比べ少なくなっています。又、新築工事から入居までに多少時間がとれることから、塗料が原因とされるシックハウス問題は、新築においては少なくなっています。
改修現場での内装塗装工事は新築時に比べると多く、時には人が住んだままで塗装が行われる事もあって、問題が発生しやすいと考えられます。中古の住宅・マンションなどの改修工事は入居までの時間が比較的に短いことが多いため、居住者のVOCへの暴露のリスクが高いと言えます。

5-3.塗料・塗装系の選択
塗料は塗装目的や被塗物の素材、使用される場所などの条件によって塗料の種類、塗装系における塗料の組み合わせ、塗装の方法などが変わります。従来は、品質、コストなどが塗料選択、塗装仕様の採用決定の要点であり、住む人の健康を配慮する事が少なかったように思われます。
シックハウス症候群のように、環境中の比較的低い濃度の化学物質に対してでも健康影響の被害を受ける人がいることを充分認識して塗料選定・施工を行うことが必要になります。

6.塗料、塗装仕様、施工方法の選定

6-1.全般的な注意
1)塗料、塗装仕様などの選定に際しては、品質、コストだけでなく「居住者の健康」を考えることが大切です。
2)居住者又は管理者と塗装仕様等を決める場合には、居住者の状況を事前に充分チェックし、塗装の設計、施工などの決定に際し健康面の配慮に役立てる事が重要です。
3)改修に際し、旧塗膜の剥離、洗浄などを行う必要がある場合には、その工法、使用剥離剤などについて充分安全性を確認する必要があります。
4)新築の場合には、塗装仕様、工期などについて施主と確認し、塗装後入居するまでにどのくらいの期間があるか、又、どのような換気が出来るかなどをチェックし、選定する必要があります。

6-2.塗料、塗装仕様の選定
1)塗装設計時には、使用する塗料の安全性、使用などについて、塗料メーカーが発行するMSDS(化学物質等安全データシート)やカタログなどから、VOCその他有害性物質の含有、有害性情報などを参考に塗料、塗装仕様、施工方法などを選定します。
2)改修には出来る限りエマルション系塗料などの健康影響や臭気影響などが少ない塗料を採用するようにして下さい。
3)塗装時及び塗装後の換気がどのように出来るかを充分考えて、塗料、塗装工程などを決めて下さい。もし、換気が充分出来ない場合には強制換気装置・器具等を持ち込むなどの対応を事前に考えて下さい。
4)外装の場合にも居住者などへの影響が出る場合があります。
溶剤系塗料の使用を考える場合には、建築構造、被塗物基材への溶剤浸透などの問題がないことを確認し、仕様を決めて下さい。又、集合住宅の階段、廊下などの準外部は換気が悪いため配慮が必要です。

7.塗装時・塗装終了後の注意

7-1.室内塗装
1)溶剤蒸気による暴露、臭気対策のために、充分な換気が出来るか確認して下さい。特に窓を開けるなどの自然換気が難しいところでは、換気装置を使用して塗装して下さい。
2)改修など居住者がいる場合に作業を行う場合では、作業を行うに当たって居住者は作業場所に入らない、他の部屋への影響の防止策など、居住者へのVOCなどの暴露を避けるための対策について居住者への理解を求めて下さい。

7-2.外部塗装
1)臭気や溶剤蒸気等の暴露など、近隣者への影響が出ないような養生の確認をして下さい。臭気の強い塗料を使用する場合は特に注意して下さい。
2)溶剤系塗料を使用する際には、出来るだけVOCの放散量を少なくするために、希釈率を守って下さい。
3)室内に臭気や溶剤蒸気等が入らない様、開口部の養生を確認して下さい。

7-3.塗装終了後
1)量は少ないですが塗膜になってからも有機溶剤の放出は続きますので、塗装後にも出来るだけ換気を行うようにして下さい。
2)気温が低い時期などには、塗装後に暖房などを使い室温を上げて塗膜からの有機溶剤の放出を促進することで、その後の居住環境へ放出を少なくする方法も条件により効果が期待できます。

8.ホルムアルデヒド規制について

8-1.ホルムアルデヒドの用途
ホルムアルデヒドは化学工業の原料として用いられ、接着剤、防腐剤、高分子材料材料に用いられています。

8-2.ホルムアルデヒドの人体への影響
刺激性のほか、感作性によるアレルギー疾患を呈し、目、鼻及び喉への刺激、不快感、流涙、くしゃみ、咳、吐き気、呼吸困難で、高度の場合は死に至ることがあります。

8-3.建築基準法等の一部改正する法律について
建築基準法の一部が下記の通り改正され、平成15年7月1日から施行されます。

↓枠で囲む
第28条の2 居室を有する建築物はその居室内に於いて制令で定める化学物質 の発生による衛生上の支障がないよう、建築材料及び換気設備について制令で定める技術的基準に適合するものとしなければならない。

↓枠で囲む
付帯決議 (5)室内環境汚染による健康障害が生ずると認められる化学物質につい ては、全て規制対象とするよう、室内空気中の化学物質の濃度の実態や発生源 発散量等の研究調査を進め、その結果が得られたものから、順次規制対象に加えること。

改正により、ホルムアルデヒドが規制対象物質とされ、換気設備の設置が義務付けられ、及び塗料、接着剤、仕上げ材を含む建築材料の使用を制限されることになります。

〈ホルムアルデヒド規制による塗料の等級区分〉↓テーブル
建材区分(告示案) —– 第3種 第2種 第1種
等級区分記号 F☆☆☆☆ F☆☆☆ F☆☆ —–
居室内での使用可否 無制限 使用面積制限 使用面積制限 使用不可
ホルムアルデヒド放散量
デシケータ法mg/L 0.12以下 0.12~0.35 0.35~1.8 1.8以上
ホルムアルデヒド放散量
チャンバー法μg/㎡h 5以下 5~20 20~120 120以上

1.保護
私たちが生活の中で使用する鉄、コンクリート、モルタル、プラスチック、木材などの素材は、そのままの状態では水、熱、光、塩分といった周囲の環境因子によってさびたり、もろくなったり、分解したりして、素材を損なうことになります。
ところが、これらの素材に塗料を塗ると、その表面に丈夫な被膜をつくって環境因子から保護し、さらに定期的な塗り替えや補修という比較的簡便な方法によって物を何倍にも長持ちさせることができ、省資源や環境安全にも役立つことになります。


日本鋼管(株)福山製鉄所


雪国まいたけ(新潟県)

2.美観
生活環境のカラー化は、都市環境から、身のまわりのインテリアや自動車・鉄道車両・航空機の色彩設計などあらゆるものに及び、現代社会の強いニーズになっています。
塗料は、比較的容易な方法によって、豊かで多彩な色・つや・なめらかさなどの自由な仕上がり感を付与することができ、バラエティのある面白いデザイン効果を生み出すこともできます。たとえば、建築物内外壁の凹凸のある仕上げなどはその代表的なものです。また、色やデザインを変えたい時には簡単に塗り替えることで、気分を一新できるのも塗料の大きな特徴です。


老人養護施設「蛍」(三重県)


日比谷公園小音楽堂

3.特別な機能
塗料は、保護と美観以外に特別な機能を与えることにより、物の価値を高めることができます。特別な機能を付与された塗料は、ハイテク技術分野を含む広い分野に適用され、品質向上、経済性(省力・省資源・省エネルギー)、快適性、安全性、環境安全などの面で新しい時代の流れに沿った社会の進歩とニーズに応えています。
特別な機能を付与した塗料としては右図に示すようなものが考えられます。
生活様式の変化、科学技術の高度化・多様化・新素材の開発・普及などにともない、さらに新しい機能を持った塗料の出現が期待されています。

特別な機能詳細
(以下テーブルは、各リンク)
電気・磁気機能 導電、電磁波シールド、電波吸収、磁性、プリント回路、IC用,帯電防止、電気絶縁
熱化学機能 耐熱、断熱、耐火、太陽熱吸収、示温、熱線反射
光学的機能 蛍光、蓄光、光再帰反射、赤外線反射、紫外線遮断、光電導
機械的機能 破びん防止、潤滑、防水、透温、凍害防止
物理的機能 着氷固着防止、貼紙防止、結露防止、油塵易除去、防滑
生物学的機能 抗菌、防かび、防藻、防虫、防汚、水産養殖、動物忌避
科学的機能 消臭、ガス選択吸収、中性化防止
その他 防音、制振、放射能防御、貼る塗料、カスタマイズ

特別な機能詳細
(以下リストは、各リンク)

・木材防虫防腐塗料
・蓄光塗料
・ネズミ咬害防止塗料
・水道施設用内面防食塗料
・貼る塗料
・高輝度再帰反射路面表示塗料
・偏光性塗料
・特殊蛍光塗料
・抗菌塗料
・構造物・建築物汚染防止塗料
・船底防汚染塗料
・油塵易除去塗料

木材防虫防腐塗料
防虫剤・防腐剤・防かび剤を配合した塗料で、木材に深く浸透し、シロアリやキクイムシから大切な住まいを守ります。

蓄光塗料
昼間に光のエネルギーを塗膜中に蓄え、暗くなるとそのエネルギーを徐々に光として放出します。パールカラーを含め多様な色彩が可能で、夜は長時間にわたり暗闇で光ります。屋外でも使えるので交通事故防止に役立ちます。

ネズミ咬害防止塗料
ネズミの味覚を強く刺激する成分を含んだ塗料を通信ケーブルやガスホース等に塗布することで、咬害による事故を未然に防ぎます。

水道施設用内面防食塗料
私たちの毎日の生活に欠かせない水道水。この水道施設用(浄水場や貯水槽など)の内面にも「塗料」が使用されています。この塗料は、日本水道協会規格に合格するとともに、人体に有害な重金属は一切含んでいません。そして、安全性の高い塗膜とともに優れた耐久性で、清潔な水道水を各家庭に届けています。

貼る塗料
現場での塗装作業が不要な「貼る塗装」は、施工が容易で、デザイン性に優れています。

高輝度再帰反射路面表示塗料
路面標識はドライバーにより良い運転環境を提供しています。夜間雨天時にもラインを視認できる高輝度工法が開発され、交通安全に貢献しています。

偏光性塗料
見る角度によって色が連続的に美しく変化し、従来のイメージからさらにデザイン性を高めた、新意匠性塗料。

特殊蛍光塗料
特殊蛍光塗料で壁に絵を描くと、通常照明の時はただの白色ですが、ブラックライトを照射すると幻想的で鮮やかな絵が現れます。

抗菌塗料
MRSA(メチシリン耐性黄色ぶどう球菌)による病院内感染や病原性大腸菌O-157による食中毒が清潔指向に拍車をかけました。抗菌塗料も、実は病院内感染対策の一つとして開発された製品。その抗菌機能は、塗料に添加された抗菌剤の働きによるものです。

構造物・建築物汚染防止塗料
汚れは、汚染物質が塗膜に付着し、時間の経過とともに塗膜表層に染み込むために起こります。汚染防止の基本機能は、汚染物質が「付きにくい」「染み込みにくい」「取れ易い」ことであり、こうした性能を備えた新しい塗料が開発されています。

船底防汚染塗料
海中生物が船底に付着すると、スピード低下など船舶の運航上に支障をきたします。この生物付着を防ぐため、従来は船底部に有機錫配合の塗料が塗られていました。この塗料は高性能ではあったものの、海洋環境にも悪影響を及ぼすことから、わが国では世界に先がけてこの使用を禁止し、現在は錫を含まない塗料が使われています。

油塵易除去塗料
油塵易除去塗料を塗布するとテフロン加工を施したフライパンのように油が粒状になって、頑固な油汚れも簡単に除去することができます。