6月1日(金)、三重県名張市の対泉閣で、実出席者42名で開催されました。
総会後の勉強会は、〈環境と産業廃棄物について〉と題して行われました。
その後、同対泉閣において、懇親会(18時~)が開催されました。

 

石綿(アスベスト)とは
石綿含有製品の種類・用途と規制等の状況
石綿による健康障害
大気中の石綿飛散の状況
建築物の解体,改修に際して
参考文献・資料

石綿(アスベスト)とは
石綿とは、天然に産出する蛇紋石系及び角閃石系の繊維状けい酸塩鉱物の総称であり、6種類に分類されます。6種類の内、産業界で使用されていたのは、クリソタイル、クロシドライト及びアモサイトの3種類であり、耐熱性、耐薬品性、絶縁性等の工業上の諸特性に優れているため、建材、電気製品、自動車、家庭用品など、これまで3,000種を超える利用形態があったといわれています。

石綿の種類
(↓テーブル)
石綿名 化学組成式
蛇紋石系 クリソタイル(温石綿、白石綿) Mg3Si2O5(OH)4
角閃石系 クロシドライト(青石綿) Na2(Fe2+、Mg)3(Fe3+)Si8O22(OH、F)2
アモサイト(茶石綿) (Fe、Mg)7Si8O22(OH)2
アンソフィライト(直閃石綿) (Mg、Fe)7Si8O22(OH)2
トレモライト(透角閃石綿) Ca2Mg5O22(OH)2
アクチノライト(陽起石綿) Ca2(Mg、Fe)5Si8O22(OH)2

クリソタイル アモサイト クロシドライト

石綿の電子顕微鏡写真
クリソタイル アモサイト

欧米で石綿の健康に対する危険性が指摘されて以来、我が国では、まず、労働安全衛生の問題として、又、昭和62年以降、学校などにおける吹付け石綿の劣化や損傷の問題が取り上げられてからは、室内環境や一般環境への汚染による一般住民の健康被害のおそれに関わる問題として顕在化しました。
その後、平成7年にクロシドライト及びアモサイトについて、労働安全衛生法に基づき製造・輸入・譲渡・使用等が禁止され、平成16年10月からは、クリソタイルについても、10種類の石綿含有製品について、製造、使用等が禁止されました。
平成17年6月下旬以降、石綿含有製品を製造していた工場や建設現場で働いていた方々の労働災害の事例や、さらには従業員の家族及び工場周辺住民の健康被害が明らかになり、石綿問題は再び大きな社会問題となっています。

石綿含有製品の種類・用途と規制等の状況
我が国は石綿の消費量のほとんどを輸入し、年間の輸入量は、高度成長期の1960年(昭和35年)代に急激に増加し、昭和49年の35万トンを最高に、1970年(昭和45年)代及び1980年(昭和55年)代は25万トンから35万トンに推移してきましたが、1990年(平成2年)代に入り年々減少し、平成17年は110トンになりました。昭和5年から平成17年までの76年間の総輸入量は、約988万トンとなっています。
平成7年度においては、石綿輸入量の約93%が建材に使用されました。

下記に建材以外の石綿含有製品を含め、それらの主な種類と用途及び規制や業界の自主的な製造中止の推移を示します。

石綿含有製品の種類と用途及び規制等の推移
(↓テーブル)
分類 石綿含有製品の主な種類 主な用途 規制等の状況
吹付石綿 鉄骨の耐火被覆、内壁・天井の吸音・断熱 昭和50年に原則禁止。
石綿含有吹付けロックウール
石綿含有吹付けバーミキュライト
石綿含有パーライト吹付け 鉄骨の耐火被覆、内壁・天井の吸音・断熱、天井の結露防止 ・石綿含有率5%を超えるものは、昭和50年に原則禁止。
・石綿含有率1%を超えるものも、概ね昭和62年頃に製造中止。
・法的には、石綿含有率1%を超えるものは、平成7年に原則禁止。平成17年の石綿則施行で全面禁止。
石綿含有保温材 配管やボイラー等の保温 概ね昭和55年頃に製造中止。
石綿含有耐火被覆材 鉄骨等の耐火被覆 概ね昭和62年頃に製造中止。
石綿含有断熱材 屋根裏の結露防止、煙突の断熱 概ね平成3年までに製造中止。
石綿含有ロックウール吸音天井板 天井の吸音 概ね昭和62年頃に製造中止。
ビニル床シート
ビニル床タイル 床 石綿含有のものは、昭和63年までに製造中止。
パルプセメント板 内壁、天井、軒天 石綿含有のものは、平成16年までに製造中止。
スレート・木毛セメント積層板 屋根の下地、壁 接着するフレキシブル板が平成16年に石綿含有製品の製造等を禁止。
石綿セメント円筒 煙突、ケーブル保護管、温泉の送湯管、排水管等 石綿含有のものは、平成16年に法的に製造・使用等が禁止。
押出セメント板 非耐力外壁、間仕切り壁
住宅屋根用化粧スレート 屋根材として張られた板の上に葺く化粧板
繊維強化セメント板 屋根、外壁、内壁、天井、軒天、耐火間仕切り
窯業系サイディング 外壁
クラッチフェーシング クラッチ 石綿含有のものは、平成16年に法的に製造・使用等が禁止。
クラッチライニング
ブレーキパッド ブレーキ
ブレーキライニング
断熱材用接着剤 高温下で使用の工業用断熱材同士の隙間の接着
石綿糸、石綿テープ グランドパッキン等の原料 平成18年度中に、既設の施設の使用については一部例外品を認めた上で、製造・使用等が禁止となる見込み。
石綿布 石綿手袋、衣服、前掛け、耐火カーテン、石綿布団等
石綿含有ガスケット 配管用フランジ部静止部分
石綿含有パッキン ポンプの軸封等の運動部分
電気絶縁用石綿セメント板 配電盤等

石綿による健康障害
 現在、石綿曝露に関連あるとして確認されている疾患としては、中皮腫、肺ガン、石綿肺、良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚が知られています。これらはいずれも大気中の石綿を吸入することにより発生すると言われています。

石綿によって起こる病気とその部位

((社)日本石綿協会「せきめん読本」より転載)

1) 中皮腫
肺を取り囲む胸膜、腹部の臓器を囲む腹膜、心臓及び大血管の起始部を覆う心膜等の表面を覆っている「中皮」にできる腫瘍です。悪性のものと良性のものがあり、悪性中皮腫はかなりまれな腫瘍ですが石綿が関与していることが多いとされています。
この腫瘍はかなりまれであり、肺がんに比べるとその頻度は1%以下です。
石綿の曝露から概ね20~50年後に発症します(約40年に発症のピークがあります)。
石綿以外の原因としては、戦時中まで使用されていたトロトラスト(放射性造影剤)、放射線、人工気胸術等によるものが報告されていますが、いずれも報告数は少なく、中皮腫のほとんどが石綿を原因とするものであり、中皮腫の診断の確からしさが担保されれば、当該中皮腫は石綿を原因とするものと考えて差し支えないと思われます。
最初の症状は、胸膜中皮腫では息切れや胸痛が多く、腹膜中皮腫では腹部膨張感や腹痛などで気づくことが多い。

2) 肺がん
肺がんは、石綿に特異的な疾患である中皮腫と異なり、喫煙をはじめ、石綿以外に発症原因が多く存在する疾患であり、石綿よりも喫煙の影響の方が大きいと言われています。
石綿が原因で生じる肺がんとそれ以外の肺がんとでは、発生部位や組織型に違いはありません。石綿が原因で生じる肺がんの場合、石綿の曝露から肺がん発症には、通例15~40年の潜伏期間があります。肺がんは、喫煙を初めとして様々な原因が指摘されている中で、石綿が原因とみなせるのは、肺がんの発症リスクを2倍以上に高める量の曝露(蓄積石綿曝露量25本/ml×年以上)があった場合とするのが妥当であるとされています。また、石綿の曝露と喫煙の両者がそろえば、肺がん発症のリスクは相乗的に高くなることが知られています。

3) 石綿肺
石綿肺は、肺が繊維化してしまう肺線維症(じん肺)という病気の一種であり、石綿を大量に吸入することによって発生した肺線維症を特に石綿肺と呼んで区別しています。潜伏期間は、15~20年といわれています。
自覚症状としては、坂道や階段を上るときなどの息切れから始まることが多く、咳や痰が続いたり、胸や背中に痛みを感じたりすることがあります。
職業上石綿粉塵を10年以上吸引した労働者に起こるといわれる職業病の疾患であり、一般環境下における発症例はこれまでに確認されていません。

4) 良性石綿胸水
石綿の高濃度曝露の人に多くみられる皮腫瘍性の胸膜炎ですが、石綿以外にも様々な原因で発症する疾患です。良性石綿胸水は、石綿以外の原因を除外することにより確定診断がなされるため、石綿曝露歴が確認できなければ、石綿以外の原因による胸水とは区別はできません。
石綿の曝露から10年以内に発症することもありますが、多くは20~40年後の突然発症します。発熱、咳、胸痛、息切れなどの症状があるが、自覚症状がない場合もあります。
尚、一般環境下における発症例はこれまでに確認されていません。

5) びまん性胸膜肥厚
石綿による胸膜炎が発症すると、それに引き続き、胸膜が癒着して広範囲に硬くなり、肺のふくらみを障害して、咳・痰、反復性胸痛、呼吸困難等を来します。
原因不明のものや石綿曝露とは無関係なものがあり、石綿曝露の客観的な情報がなければ、他の原因によるびまん性胸膜肥厚と区別して石綿によるものと判断することは困難です。

6) その他の疾患
① 円形無気肺
臓側胸膜の病変が主体で、石綿曝露が原因で、良性石綿胸水後に発生する場合が多く、自覚症状はほとんどなく、咳、喀痰、胸痛、呼吸困難を訴える場合もありますが、まれです。ほとんど治療は必要とせず、経過観察にとどまります。

② その他の部位のがん
中皮腫、肺がん以外のがんについて石綿の関与を疑う研究報告もありますが、中皮腫、肺がんのように確立した知見といえるものは、現時点ではまだありません。

大気中の石綿飛散の状況
石綿は浮遊粉塵であると同時に繊維物質であり、単位は本(f)で表され、含有製品製造工場では大気汚染防止法に基づく敷地境界における測定が義務付けられています。

敷地境界基準値 : 石綿濃度10本(f)/1リットル

環境省では、平成17年7月29日付け「石綿問題への当面の対応」(石綿問題に関する関係閣僚による会合決定事項)に基づき、石綿による大気汚染の現状を把握し、今後の対策の検討に当たっての基礎資料とすべく、大気濃度調査が行われました。

調査地域分類別に集計・整理した結果
(↓テーブル)
地 域 分 類 地域数 地点数 最小値
(本/L) 最大値
(本/L) 幾何平均値
(本/L)
住宅地域 24 48 0.11未満 1.38 0.23
商工業地域 13 26 0.10未満 1.56 0.23
農業地域 4 8 0.11未満 0.68 0.31
高速道路及び幹線道路沿線 5 10 0.14未満 2.20 0.36
石綿製品製造事業場の旧所在地 3 12 0.14未満 0.89 0.31
石綿製品製造事業場等 17 34 0.11未満 1.75 0.34
廃棄物処分場 21 41 0.11未満 2.70 0.49
-うち最終処分場 12 23 0.11未満 1.69 0.42
- うち(中間処理施設【破砕施設有】) 5 10 0.14未満 2.70 0.64
- うち(中間処理施設等【破砕施設無】) 4 8 0.11未満 2.41 0.54
解体現場等(吹付け石綿除去工事)(敷地周辺) 17 64 0.10未満 2.15 0.26
解体現場等(吹付け石綿除去工事を除く)(敷地周辺) 2 8 0.11未満 1.81 0.36
蛇紋岩地域 3 6 0.11未満 0.39 0.19
石綿製品製造事業場(排気口付近) 9 9 0.10未満 2.72 0.36
解体現場等(吹付け石綿除去工事)(前室付近) 13 13 0.11未満 4.53 0.44
解体現場等(吹付け石綿除去工事)(排気口付近) 17 17 0.11未満 5.78 0.28
合 計 109 296

今回の調査結果はいずれの地域分類においても特に高い濃度は見られず、現時点で直ちに問題になるレベルではないと思われます。

建築物の解体、改修に際して
今後、建築物の老朽化による解体、改修の工事の増加に伴って、石綿を含有する廃棄物が多量に排出されることが予想されます。環境省では、建築物の解体による石綿の排出量が2020年から2040年頃にピークになると予測しており、年間10万トン前後の石綿が排出されると見込まれています。
石綿及び石綿含有物の取り扱いには、労働安全衛生法、大気汚染防止法、廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)、建設リサイクル法(建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律)及び石綿障害予防規則等が適用されます。これらの法律を遵守して事前調査・事前処置・施工・廃棄物処理等を行うことが必要となります。
一般的な戸建て住宅の場合、「吹付けアスベスト等」が施工されているケースはあまりありませんが、地下室や倉庫、鉄骨部分がある場合は、内部の壁や鉄骨の表面等をチェックし、確認して下さい。
但し、「吹付けアスベスト等」以外の石綿含有建材が使用されている可能性があります。これらは、良好な状態であれば、加工などの操作を行わない限り、石綿の飛散はないと考えられますが、成型板表面の経年劣化や、表面の被覆や塗装の剥がれによる表面露出により、石綿が飛散する可能性があります。

石綿含有建材一覧
(↓テーブル)
分類 石綿含有建材の主な種類 施 工 部 位
成型板等 石綿含有ロックウール吸音天井板 天井
ビニル床シート、ビニル床タイル 床
パルプセメント板 内壁、天井、軒天
スレート・木毛セメント積層板 屋根、壁
石綿セメント円筒 煙突、ケーブル保護管、温泉の送湯管、排水管等
押出セメント板 外壁、間仕切り壁
住宅屋根用化粧スレート 屋根
繊維強化セメント板 屋根、外壁、内壁、天井、軒天、耐火間仕切り
窯業系サイディング 外壁


(厚生労働省労働基準局発行パンフレットより転載)

塗料、塗材の過去の一部製品に石綿が使用されていたものがありますが、添加量も少なくセメントや合成樹脂などで固められていますので、通常の環境下で石綿粉塵が飛散することはない(非飛散性)と思われます。ただし、塗料、塗材が劣化して表面がかなり脆弱になっている場合、あるいは塗り替え工事や解体工事で塗料、塗材を削ったり、物理的な力を加えて除去する場合には、石綿が飛散することも考えられますので注意が必要です。
※塗材中の石綿含有の情報については、日本建築仕上材工業会(NSK)のホームページに記載されています。

住宅の改修にあたっては、建材中の石綿の含有の有無を確認し、石綿を含有する建材が使用されている場合は、工事に携わる労働者の健康障害の防止、大気への汚染防止、適正な廃棄物の処理を行い、石綿の飛散に充分注意を払わなければなりません。
住居に使用した建材の製造会社のホームページ、関連団体のホームページ等に石綿に関する情報が記載されていますので、建材中の石綿の含有の有無について検索できます。検索する際には、使用建材の‘名称’‘製造会社’‘製造年月日(又は建物の建築年月)’等が明確になっていることが必要です。
ホームページの検索により石綿の含有の有無が判明しない場合は、建材製造会社への確認、又はアスベスト分析機関での分析が必要となります。
建材中に石綿を含有していることが判明した場合は、専門業者と適切な改修方法を相談・決定し、各種法・規則に則って工事を行って下さい。
※アスベスト分析機関については、(社)日本石綿協会等のホームページに記載されています。

参考文献・資料
「建築物の解体等に係る石綿飛散防止対策マニュアル」(東京都環境局)
「平成17年度石綿緊急大気濃度調査結果について」環境省報道発表資料(平成18年3月31日)
石綿による健康被害に係る医学的判断に関する検討会:「石綿による健康被害に係る医学的判断に関する考え方報告書」環境省・厚生労働省(2006)
大阪市都市環境局ホームページ‘アスベスト関係について’
日本建築仕上材工業会ホームぺージ‘アスベスト含有塗材情報’

はじめに
VOC規制の概要
VOC規制の必要性
VOCの発生源
VOC低減のための塗料・塗装業界の取り組み
おわりに

はじめに
VOC(揮発性有機化合物;Volatile Organic Compounds)とは、常温常圧で空気中に容易に揮散する物質の総称で、主に人工合成されたものを指し、トルエン、ベンゼン、キシレンなどを含みます。粘性が低くて、難分解性であることが多いため、地層に浸透して土壌、地下水を汚染します。一方、大気中に放出され、光化学反応によって光化学オキシダント(Photochemical Oxidant)やSPM(浮遊粒子状物質;Suspended Particulate Matter)の発生に関与していると考えられています。

光化学オキシダント(Photochemical Oxidant;Ox)
・・・工場ばい煙や自動車排出ガスに含まれている窒素酸化物や炭化水素が一定レベル以上の汚染の下で紫外線による光化学反応を繰り返すことによって生じる酸化性物質(オゾン、パーオキシアセチルナイトレート、ヒドロキシパーオキシドなど)の総称である。
粘膜への刺激、呼吸への影響等の健康影響のほか、農作物などの植物を枯らすなどの被害を及ぼす。

SPM(浮遊粒子状物質;Suspended Particulate Matter)
・・・大気中に浮遊している粒子状物質で、代表的な「大気汚染物質」の一つ。
その粒子径は、10μm以下のものと定義されている。

発生源は工場ばい煙、自動車排出ガスなどの人間の活動に伴うもののほか、自然界由来(火山、森林火災など)のものがある。また、粒子として排出される一次粒子とガス状物質が大気中で粒子化する二次生成粒子がある。
粒径により呼吸器系の各部位に沈着し、年平均100㎎/m3になると呼吸器系への影響、死亡率の上昇などがみられることが知られている。

VOCは1970年代初頭から農薬や、電気工場や半導体工場で洗浄剤などとして大量に使用されていましたが、当時規制する法律がなく、土壌にそのまま廃棄されていたものが、再開発等によって汚染事例が多数判明してきており、社会問題化しています。2002年には、「自動車NOx・PM法」を定め、2010年までにSPMに関わる環境基準の概ね達成を大気汚染防止行政の最重要課題としました。尚、ベンゼン、トリクロルエチレン等有害大気汚染物質に該当するVOCは、個々の有害性に着目して自主的取り組みが進められました。

自動車NOx・PM法
・・・1992年、関東及び関西圏の市区町村を対象に「自動車NOx法」が、ディーゼル自動車から排出される窒素酸化物(NOx)を抑制することを目的に定められたが、多くの地域で二酸化窒素の環境基準をクリアしていないことや、粒子状物質が(PM)が健康に悪影響を及ぼしているという問題を受けて、制定された。対象地域も中部圏が追加されている。

大気中に放出されるVOCは、環境省の試算では国内で2000年度に年間約185万トンと推計されており、諸外国に比べ単位面積あたりの排出量が高く、濃度も高い等の理由から、固定発生源からの削減義務等を規定する「改正大気汚染防止法(VOC規制)」の施行が予定されています。

VOC規制の概要
環境省は、2010年度までに大気環境基準を達成するには、SPM及び光化学オキシダントの原因物質の一つであるVOCの排出規制が効果的だと判断し、工場・事業所からの排出抑制を主目的とする改正大気汚染防止法(VOC規制)が2004年5月公布されました。

<<大気環境基準>>
SPM(浮遊粒子状物質;Suspended Particulate Matter)
…1時間値の1日平均値が、0.10㎎/m3以下であり、かつ、1時間値が、0.2mg/m3以下であること。

光化学オキシダント(Photochemical Oxidant;Ox)
…1時間値が、0.06ppmであること。

法規制と事業者の自主的取り組みにより、2010年度までに固定発生源から排出されるVOC量を2000年度に比して30%程度削減する事により、2010年度にはSPMと光化学オキシダントの間環境基準を概ね達成します。

規制の施行スケジュール
(↓テーブル)
1)閣議決定 2004年3月9日
2)公布 2004年5月26日
3)政省令の制定 2005年秋頃
4)法律の施行 2006年5月頃
5)既存施設の届出 2007年末頃
6)見直し 2012年頃
5年間の取り組みを踏まえ、環境基準の達成状況を評価し、見直す。

大気中に放出されるVOC量の約90%が、工場や事業場などの固定発生源から放出されており、改正法では、排出口から排出されたVOCの濃度を規制し、工場、事業所に設置される施設を規制の対象としています。

規制の要点
(↓テーブル)
No. 分類 内容
1 VOCの定義 ・VOCとは、大気中に排出され、また飛散した時、気体である有機化合物をいう。但し、SPMまたはオキシダントの原因とならない政令で定める物質を除く。
2 VOC排出施設 ・VOC排出施設とは、工場または事業場に設置される施設で排出されるVOCが大気汚染になり、排出量が多く、政令で定めたもの。
3 排出口 ・排出口とは、大気中にVOCを排出するために設けられた煙突や施設の開口部をいう。
4 排出基準 ・施設の排出口から大気中に排出される排出物のVOC濃度の許容限度として、環境省令で定める。
5 施設設置の届出 ・施設を設置する時には、都道府県知事に届出なければならない。
6 経過措置 ・既存施設は、法律施行実施日より30日以内に環境省令の定めにより、都道府県知事に届出る。
7 施設の変更 ・既届出の施設等の変更は、環境省令の定めにより、都道府県知事に届出なければならない。
8 計画変更命令 ・届出により、知事は排出基準に適合しないときは、60日以内に限り 計画変更や廃止を命じることができる。
9 実施制限 ・新設及び変更届出から60日経過後でなければ、施設の設置や構造、使用の変更はできない。
10 改善命令 ・知事は排出基準に適合しないと認める時は、期限を定めて改善または一時停止を命じることができる。
11 濃度測定 ・事業者は排出濃度を測定し、その結果を記録しておかなければならない。
12 条例との関係 ・VOC以外の物質やVOC排出施設以外の施設については、条例で必要な規制を定めることを妨げない。
13 罰則 ・命令に違反した者は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金
・届出せず、または虚偽の届出をした者は、3ヶ月以下の懲役または 30万円以下の罰金
・届出を30日以内にしなかった場合は、20万円以下の罰金

規制対象外である屋外塗装などの開放系や、小規模施設についてもVOC排出抑制対策を推進する必要があります。
行政は、低VOC製品の開発、使用を促す施策を講じ、又、関係団体等事業者は、製品の低VOC化を促進したり、VOC排出抑制のためのガイドライン、計画等を策定するなどの取り組みを推進しています。

VOC規制の必要性
VOCは、光化学オキシダント及びSPMの二次生成粒子の原因物質とされています。光化学オキシダントは、大気中のVOCとNOxの混合系から太陽光照射による化学反応により生成され、SPMの二次生成粒子は、大気中のVOCが化学反応を起こし、更に反応生成物が凝集する事などにより生成します。
光化学オキシダント及びSPMの増加により、人間及び植物に悪影響を及ぼすことになります。

VOCの発生源
大気中に放出されるVOCの発生源別にみると、工場や事業場などの固定発生源が約90%であり、約10%が自動車などの移動発生源である。
また、国立環境研究所のシミュレーション調査によれば大気へ排出されているVOC量の比率は、需要分野毎で示されており、塗料・塗装に関わる比率は37%にもなります。

PRTRでの調査によると、2001年度の大気に排出されている比率は47%も占め、キシレン(エチルベンゼン含む)が 22%になります。

PRTR制度(Pollutant Release and Transfer Register)
・・・人の健康や生態系に有害なおそれのある化学物質について、事業所からの環境(大気、水、土壌)への排出量及び廃棄物に含まれての事業所外への移動量を、事業者が自ら把握し国に対して届け出るとともに、国は届出データや推計に基づき、排出量・移動量を公表する制度。

塗料・塗装からの排出量比率を比較するとキシレン(エチルベンゼン含む)37%となり、トルエンを大きく上回ります。

VOC低減のための塗料・塗装業界の取り組み
建築塗装や船舶塗装のように、屋外において大規模に塗装をする場合には、放出されたVOCを集め、削減することは困難であり、VOC排出量を低減するためには、VOCの使用量の少ない塗料を選定、使用し、VOCの放出量を低減する必要があります。

塗料種類別のVOC排出量比較

 ただ、低VOC塗料の採用は、VOC排出抑制に効果的ですが、塗膜性能、塗装作業性、塗装設備などに対する課題も少なくなく、塗料ユーザーサイドの理解と抑制に対する積極的な取り組みが必要です。

塗料でのVOC排出抑制対応について
(↓テーブル)
対応方法 実施及び試行例 課題と問題点


化 含有VOC削減 建築内外装、電着塗料、 家庭用、窯業系建材 乾燥性、作業性低下、低温造膜性、塗膜強度
溶剤系からの変換 自動車中上塗り・補修、 車両、木工、構造物、 路面表示 乾燥性、作業性低下、塗膜強度、 光沢、鮮映性、コストアップ
無溶剤化 床、船舶、構造物 作業性、塗料ロス、コストアップ、多液化
ハイソリッド化 構造物、船舶、機械、 建材、金属 作業性低下、コストアップ、多液化
粉体化 電気機械、金属、機械 設備自由度限定、素材選択性、 コストアップ

おわりに
改正法の中には「国民の努力」として、VOCの使用量の少ない製品の選択によりVOCの排出、飛散の少ない製品の選択等により、VOCの排出、飛散の抑制に努力することになっています。

国民の努力
・・・何人も、その日常生活を伴う揮発性有機化合物の大気中への排出又は飛散を抑制するように努めるともに、製品の購入に当たって揮発性有機化合物の使用量の少ない製品を選択すること等により揮発性有機化合物の排出又は飛散の抑制を促進するよう努めなければならない。

(法第17条の14)
今回の法改正では建築や大型構造物など屋外で使用し排出されるVOCについては対象外ですが、VOCを大量に大気へ排出している塗料・塗装業界は早急な対応をしなければならず、排出量の少ない製品の開発、販売及び使用に努力しています。

実塗装現場(VOC放散低減を考慮し、水系塗料をローラーにて施工)

社団法人日本塗料工業会では自主目標を設定し、2006年に2001年比30%削減、2008年には50%削減とし、ユーザーと協同で目標の達成を目指すこととしています。

はじめに
室内空気汚染問題
シックハウス症候群
厚生労働省
文部科学省
国土交通省
環境省
東京都
日本塗料工業会
経済産業省
今後の規制とTVOC
健康・環境配慮形塗料の選定基準

はじめに
目覚ましい科学技術の発展に伴い、人類の生活を豊かで快適なものにした現代ですが、その反面、自然を破壊し環境への負荷は地球環境にまで及んでいます。
地球の温暖化、酸性雨、生態系の破壊、資源の枯渇、廃棄物の増大、大気汚染、水質汚染、土壌汚染など環境に対する問題が次々とクローズアップされてきました。
このような状況の中で近年の住宅における室内空気汚染による人体への影響が大きく取り上げられてきました。

室内空気汚染問題
室内空気汚染問題に対する行政の主な指針としては、厚生労働省の「室内空気汚染に係るガイドライン」によるホルムアルデヒドをはじめとする化学物質の室内濃度指針値の策定。文部科学省の「学校環境衛生の基準」の一部改訂として、学校工事後のホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼンの濃度測定、及びその値を指針値以下とするように義務づけた。さらにこのたび国土交通省の改正建築基準法(平成5年7月施行)により、住宅内装材が規制になり、塗料及び仕上塗材ではホルムアルデヒドが規制の対象になります。これを受け経済産業省は、JISの整備見直しが行われました。

シックハウス症候群
新築・改築後の住宅において、住宅の高気密化や、使用された建材・内装等から放散する化学物質による室内空気汚染等により、居住者に様々な体調不良が生じている。症状が多様で、未解明な部分が多く複合的要因が考えられシックハウス症候群と呼ばれている。

症状は
● 目がチカチカする。
● 頭痛・めまい・吐き気。
● 鼻水・くしゃみ・せき・のどの痛み。
● 気分が悪い。
   
要因
● 住宅に使用されている建材、家具、日用品等から様々な化学物質が発散。
● 住宅の気密性が高くなった。
● ライフスタイルが変化し換気が不足しがち。

シックハウス症候群は
医学的に定義された病名ではありません。屋外にいるときは症状がないのに、住宅やビルの中に入ったとき体調不良の症状を訴える。これらを総称して用いられる名称です。
シックハウス症候群の原因の一部としてホルムアルデヒドやVOC(トルエン、キシレン等)と言われる揮発性の有機化合物があります。VOCとはVolatile(揮発性)Organic(有機)Compounds(化合物)の頭文字をとったものです。

厚生労働省
厚生労働省では、平成12年4月よりシックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会で、室内空気汚染物(有害化学物質)について、下記の13物質がガイドライン(指針値)として示されています。

●有害化学物質の室内濃度指針値(↓テーブル)
揮発性有機化合物 室内濃度指針値 主な用途
ホルムアルデヒド 100μg/m3(0.08ppm) 合板、パーティクルボード、壁紙用接着剤等に用いられるユリア系、メラミン系、フェノール系等の合成樹脂、接着剤、一部ののり等の防腐剤
トルエン 260μg/m3(0.07ppm) 内装材等の施工用接着剤、塗料等
キシレン 870μg/m3(0.20ppm) 内装材等の施工用接着剤、塗料等
パラジクロロベンゼン 240μg/m3(0.04ppm) 衣類の防虫剤、トイレの芳香剤等
エチルベンゼン 3800μg/m3(0.88ppm) 内装材等の施工用接着剤、塗料等
スチレン 220μg/m3(0.05ppm) ポリスチレン樹脂等を使用した断熱材等
クロルピリホス 1μg/m3(0.07ppb)但し小児の場合は0.1μg/m3(0.007ppb) しろあり駆除剤
フタル酸ジ-n-プチル 220μg/m3(0.02ppm) 塗料、接着剤等の可塑剤
テトラデカン 330μg/m3(0.04ppm) 灯油、塗料等の溶剤
フタル酸ジ-2-エチルへキシル 120μg/m3(7.6ppb) 壁紙、床材等の可塑剤
ダイアジノン 0.29μg/m3(0.02ppb) 殺虫剤
アセトアルデヒド 48μg/m3(0.03ppm) ホルムアルデヒド同様一部の接着剤、防腐剤等
フェノブカルブ 33μg/m3(3.8ppb) しろあり駆除剤
総揮発性有機化合物量(TVOC) 暫定目標値400μg/m3  
(ここまで)
※25℃の場合 ppm:100万分の1の濃度、ppb:10億分の1の濃度

●厚生労働省の室内環境に関する規制の要点
・室内濃度指針値以下が望ましい。
・VOC測定及び指針値以下の義務付けではない。
・ガイドラインは目標基準で規制ではない。
・室内のみが対象。(室外は対象外)

ppm とは
濃度の単位100万分の1を1ppmという。ホルムアルデヒド0.08ppmは1,000L中に0.08ml。

室内濃度指針値とは、その濃度の空気を一生涯にわたって呼吸しても問題ないであろう、またこの値以下が望ましいとする値。

ホルムアルテヒドは刺激臭の強い無色の化学物質で、室温では気体として存在します。殺菌作用があり、防腐剤、合板などの接着剤の原料、繊維の縮み防止加工剤など幅広い用途に用いられている物質です。

文部科学省
文部科学省では、平成14年2月より「学校環境衛生の基準」の一部改定を各都道府県教育委員会等に通知しています。

●文部科学省の室内環境に関する規制(改定)の要点
定期環境衛生検査 ・・・・・ 教室の空気の検査事項として
・毎学年1回の定期検査の実施。
・ホルムアルデヒド、トルエンについて濃度測定実施。
 キシレン、パラジクロロベンゼンについては必要に応じ実施。
・判定基準値は厚生労働省の指針値に準ず。(上記の数値以下であること。)
事後措置は
・換気を励行する。
・その発生の原因を究明する。
・発生抑制措置をとる。

臨時環境衛生検査
・コンピュータ等新たな学校用備品の搬入等により発生の恐れがあるときに実施。
・新築・改装・改修工事後にホルムアルデヒド測定を義務付け。

基準値以下であることを確認の上で引き渡し

国土交通省
建築基準法が平成14年7月に一部改正(15年7月より施行)され、その第28条の2に「居室を有する建築物は、その居室内に於いて政令で定める化学物質の発生による衛生上の支障がないよう、建築材料及び換気設備について政令で定める技術的基準に適合するものとしなければならない」と制定されました。これを受け、技術的基準として「建築基準法施行令の一部を政令」が公布される。これに伴い国土交通省告示により、それぞれ第一種、第二種及び第三種のホルムアルデヒド発散建築材料が定められました。また関連のJISが改正されました。

発散と拡散
・発散 建築基準法施工令及び告示で用いられる用語
・拡散 JISで用いられている用語。

事実上同意語
●規制対象工事
・公共、民間を問わず居室の内装工事。
●規制対象物質
・ホルムアルデヒド、クロルビリホス(しろあり駆除剤)
●規制対象材料
・木質建材(合板、木質フローリング、パーティクルボード、MDFなど)、壁紙、ホルムアルデヒドを含む断熱材、接着剤、塗料、仕上塗材など。
●規制対象範囲
・「居室」の内装仕上げ、天井裏における面的な部分。

増築、改装、大規模の修繕大規模の模様替え工事にも適用。

対象外
柱等の軸材や回り縁、窓台、巾木、手すり等の造作部分、建具枠、間柱、胴縁、部分的に用いる塗料(タッチアップ等)、接着剤等。

●規制対象居室
居間、寝室、事務室、会議室、工場作業場、店舗の売り場、厨房、教室、職員室、応接間、食堂等。

居室とは居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室をいう。

対象外
玄関、廊下、トイレ、浴室、納戸、更衣室、事務所の給湯室等。

対策1
①建築材料の区分

内装仕上げに使用するホルムアルデヒドを発散する建材こは、次のような制限が行われます

(↓テーブル)
建築材料の区分 ホルムアルデヒドの発散 JIS、JASなどの 表示記号 内装仕上げの 制限
チャンバー法 テシケータ法
建築基準法の
規制対象外 5μg/㎡h 0.12以下mg/L F☆☆☆☆ 制限なしに使える
第3種ホルムアルデヒド
発散建築材料 5~20μg/㎡h 0.12~0.35mg/L F☆☆☆ 使用面積が制限される
第2種ホルムアルデヒド
発散建築材料 20~120μg/㎡h (0.35~1.8)mg/L F☆☆
第1種ホルムアルデヒド
発散建築材料 120μg/㎡h超 (1.8以上)mg/L  旧E2、Fc2又は表示なし 使用禁止
備  考 対象となる建材 塗料限定の測定法    

チャンバー法…JIS A1901スモールチャンバー法→ホルムアルデヒドの放散速度測定
デシケータ一法…JIS K5601塗膜からの放散成分分析→ホルムアルデヒドの放散量測定

μg(マイクログラム)
100万分の1gの重さ。放散速度は1μg/㎡hは建材1㎡につき1時間当たり1μgの化学物質が発散されることをいいます。

建築物の部分に使用して5年経過したものについては、制限なし。

②第2種・第3種ホルムアルデヒド発散建築材料の使用面積の制限

第2種ホルムアルデヒド発散建築材料(F☆☆)及び第3種ホルムアルデヒド発散建築材料(F☆☆☆)については、次の式を満たすように、居室の内装の仕上げの使用面積を制酸します。

N2S2 + N3S3 ≦ A
第2種分   第3種分    

S2:第2種ホルムアルデヒド建築材料の使用面積
S3:第3種ホルムアルデヒド建築材料の使用面積
A:居室の床面積

(↓テーブル)
居室の種類 換気回数 N2 N3
住宅等の居室(※) 0.7回/h以上 1.2 0.20
0.5回/h以上0.7回/h未満 2.8 0.50
上記以外の居室(※) 0.7回/h以上 0.88 0.15
0.5回/h以上0.7回/h未満 1.4 0.25
0.3回/h以上0.5回/h未満 3.0 0.50

※ 住宅等の居室とは、住宅の居室、下宿の宿泊室、寄宿舎の寝室、家具その他これに類する物品の販売業を営む店舗の売場をいいます。上記以外の居室には、学校、オフィス、病院など他の用途の居室が全て含まれます。

対策2
ホルムアルデヒドを発散する建材を使用しない場合でも、家具からの発散があるため、原則として全ての建築物に機械換気設備の設置が義務付けられます。

(↓テーブル)
居室の種類 換気回数
住宅等の居室 0.5回/h以上
上記以外の居室 0.3回/h以上

換気回数とは
1時間当たり居室内の空気が入れ替わる回数。0.5回は居室内の空気の半分が入れ替わること。

対策3
機械換気設備を設ける場合には、天井裏、床下、壁内、収納スペースなどから居室へのホルムアルデヒドの流入を防ぐため、次の①~③のいずれかの措置が必要となります。収納スペースの建具に空気取り入れ口などを設計、かつ、居室と一体的に換気を行う部分については居室とみなされ対策Ⅰの対象となる。

(↓テーブル)
①建榔こよる措置 天井裏などに第1種、第2種のホルムアルデヒド発散建築材料を使用しない(F☆☆☆以上とする)
②気密層、通気止めによる措置 気密層又は通気止めを設けて天井裏などと居室とを区画する。
③換気設備による措置 換気設備を居室に加えて天井裏なども換気できるものとする。

環境省
環境省では平成12年5月に循環型形成推進基本法のひとつとして、グリーン購入法(国等による環境物品等の調達の推進に関する法律)が制定されました。
同法は国の機関や地方公共団体、企業、国民に環境負荷の小さい環境物品等の調達・購入を推進するとともに環境物品等に関する適切な情報・提供を促進することにより、持続可能な社会の構築をめざすものです。
平成13年2月、国等の各機関で重点的に調達を推進する特定調達品(グリーン商品101品目)が14分野にわたり公示されました。平成14年4月から塗料関係の品目として公共工事の分野において「下塗り塗料(重防食)」(鉛・クロム等の有害重金属を含む顔料を配合していないこと)が指定されました。

東京都
環東京都環境局より平成14年7月、化学物質の子どもガイドライン(鉛ガイドライン塗料編)が示されました。子どもへの有害性が疑われる化学物質を選定し健康への影響を未然に防止するために講じられたガイドラインです。
都民・事業者及び子どもが多く利用する施設の管理者が代替品への転換や代替物質がない場合は、使用量を抑制する方策に向けた内容としています。

●概要
子どもが多く利用する施設や遊具の塗装には、鉛フリーの塗料を使ってください。
都は鉛フリー塗料の積極的な利用をお願いしていきます。
製造事業者は鉛フリー製品であることを表示し、鉛フリー塗料の使用拡大を図ってください。
子どもが多く利用する施設の管理者は、遊具や建築物の上塗り塗料及び下塗り錆止め塗料等には鉛フリー塗料を使ってください。
子どもが多く利用する施設の設計者は、塗料には鉛フリー塗料を指定してください。
子どもが多く利用する施設では、塗膜の剥離がないことを確認してください。
(鉛フリー塗料として、塗膜中の鉛の含有量を0.06%以下に設定)
●塗り替えをする時は
既に塗られている塗料の成分や鉛の含有量を確認してください。
シートを張る板張り防護など塗膜片の飛散や落下による周辺への汚染防止対策を行ってください。

日本塗料工業会
(社)日本塗料工業会では以下のように室内建築塗料の目標基準を設定しています。

(↓テーブル)
塗料設計条件 エマルション塗料 溶剤系塗料
TVOC l%以下 –
芳香族来溶剤 0.1%以下 1%以下
アルデヒド類 0.01%以下 0.01%以下
重金属類(鉛・クロム等 0.05%以下 0.05%以下
発癌性物質、生殖毒性物質、変異原性物質 0.1%以下 0.1%以下
感作性物質 0.1%以下 0.1%以下

注)
1.重金属類とは、鉛、クロム、カドミウム、砒素、水銀とする。
2.アルデヒド類はホルムアルデヒド、アセトアルデヒドを対象とする。
3.各項目に対する物質の濃度は塗料重量に対する物質重量%とする。
またこの場合の塗料とは塗装状態(例えばシンナーで希釈したもの)とする。
従ってシンナーを使用する場合はその組成も特定する必要がある。
4.VOCは標準圧力で、沸点又は開始点が260℃以下の化学物質とする。
5.TVOCは組成中の全てのVOCの合計値とする。
6.芳香族系溶剤は、VOC対象でその骨格中に芳香族環を一つ以上含有する溶剤。

経済産業省
 室内空気汚染の対象となる建築材料のJISを整備し、平成15年3月にホルムアルデヒドに関する規定が大幅に見直しされました。

規制対象外になるJIS製品、F☆☆☆☆表示となり使用制限なし
規制対象外(塗料16品種)

(↓テーブル)
JIS K 5431 セラックニス類 JIS K 5654 アクリル樹脂エナメル
JIS K 5531 ニトロセルロースラッカー JIS K 5656 建築用ポリウレタン樹脂塗料※
JIS K 5533 ラッカー系シーラー JIS K 5660 つや有り合成樹脂エマルションペイント※
JIS K 5535 ラッカー系下地塗料 JIS K 5663 合成樹脂エマルションペイント及びシーラー
JIS K 5581 塩化ビニル樹脂ワニス JIS K 5668 合成樹脂エマルション模様塗料
JIS K 5582 塩化ビニル樹脂エナメル JIS K 5669 合成樹脂エマルションパテ
JIS K 5583 塩化ビニル樹脂プライマー JIS K 5960 家庭用屋内壁塗料
JIS K 5653 アクリル樹脂ワニス JIS K 5670 アクリル樹脂系非水分散形塗料(新規)

JISの内容
ホルムアルデヒド系防腐剤、ユリア系樹脂、フェノール系樹脂及びメラミン系樹脂のいずれをも含まないもの。
ホルムアルデヒド放散量0.12mg/L以下。

※現在のところ、JISマーク表示制度は適用されていません。

規制対象となり、第1種ホルムアルデヒド発散材料となる塗料及び仕上塗材
ただし、ホルムアルデヒドに関する品質規定に該当するものはF☆☆~F☆☆☆☆マークが表示できる。
規制対象(塗料11品種)

(↓テーブル)
JIS K 5429 アルミニウムペイント JIS K 5621 一般さび止めペイント
JIS K 5511 油性調合ペイント JIS K 5667 多彩模様塗料
JIS K 5516 合成樹脂調合ペイント JIS K 5961 家庭用屋内木床塗料
JIS K 5562 フタル酸樹脂ワニス JIS K 5962 家庭用木部金属部塗料
JIS K 5572 フタル酸樹脂エナメル JIS K 5970 建物用床塗料(新規)
JIS K 5591 油性系下地塗料    

JISの内容
ホルムアルデヒド放散量 1.8mg/L以下F☆☆
ホルムアルデヒド放散量 0.35mg/L以下F☆☆☆
ホルムアルデヒド放散量 0.12mg/L以下F☆☆☆☆

規制対象(仕上塗材5種顆)

(↓テーブル)
JIS A 6909 建築用仕上塗材

・内装薄塗材E・内装厚塗材E・軽量塗材・複層塗材E・防水形複層塗材E
内装用の仕上塗材で、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂及びホルムアルデヒド系防腐剤の使用していないものはF☆☆☆☆マークが表示できる。

今後の規制とTVOC
今回の建築基準法の一部改正の中で次のような付帯決議があります。「屋内空気汚染による健康障害が生ずると認められる化学物質については、全て規制対象とするよう、室内空気中の化学物質の濃度の実態や発生源、放散量等の調査研究を進めその結果の得られたものから、順次規制対象にすること。」これは、近い将来に厚生労働省のリストから順次規制対象品目が出されると考えられます。ですからVOCの総量(TVOC)が出来るかぎり低い塗料が良いことは明白です。

健康・環境配慮形塗料の選定基準
ホルムアルデヒド放散等級分類が規制対象外の製品(F☆☆☆☆表示品)を選ぶ。
水系塗料ではTVOCが日本塗料工業会の目標基準である1.0%以下の製品を選ぶ。
下塗、上塗ともに鉛・クロム化合物を含まない製品を選ぶ。

1. シックハウスについて
2. 住宅に関係する化学物質と健康影響との関係
3. 化学物質の室内環境濃度の基準について
4. 各種建築資材とそこから放出が考えられる化学物質の関係
5. 安全な塗装・施工について
6. 塗料、塗装仕様、施工方法の選定
7. 塗装時・塗装終了後の注意
8. ホルムアルデヒド規制について

1.シックハウスについて

1-1.シックハウス問題とは
新築の住宅に入居した人や住宅を改修した後に体調を悪くしたということを訴える人が増えてきています。これは、建材に化学物質が使われていることや住宅の機密性を高くしたために室内の化学物質の濃度が高くなった影響と言われています。

1-2.シックハウスの症状と要因
シックハウスと言われる症状は、体調不良や皮膚障害、自律神経失調など多様であり、必ずしも特定の症状として現れないため総称的に「シックハウス症候群」と呼ばれています。これらの原因となる化学物質は、合板、接着剤、塗料、絨毯、畳、防蟻剤などから放出されると言われていますが、実際にはどのような物質が原因となっているかを明確にする事は難しいのが現状です。

2.住宅に関係する化学物質と健康影響との関係
住宅に関連する化学物質の健康への影響は次のようなものが考えられます。

2-1.急性中毒
化学物質に短期に曝された時に生じる健康影響で、塗装時の溶剤による中毒などのように高い濃度に曝された場合にすぐに起きる影響です。溶剤などによる中毒の場合には、目やのどの痛み、呼吸困難、めまい、頭痛、吐き気などが起き、ひどい場合は失神することがあります。

2-2.感作性(アレルギーを引き起こす性質)
住宅に関係するもののうち「かび」「ダニ」などがアレルゲン(アレルギーの原因となるもの)となりますが、化学物質にもアレルギーなどを引き起こすものがあります。アレルギーは誰にでも起こるものではなく、体質や体調により影響が違って現れます。 アレルギーの症状として、皮膚ではかゆみや湿疹、呼吸器では喘息などとして現れます。化学物質としてホルムアルデヒド、ある種の殺虫剤などが知られています。

2-3.化学物質過敏症
ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン等のVOC(揮発性有機化学物質)、殺虫剤、可塑剤などの化学物質に大量に曝されたり、又は少しでも継続して長期間暴露することによって引き起こされると言われています。この場合も誰にでも発症するのではなく、体質などにより影響の出方が異なると言われています。症状として、自律神経異常、皮膚障害、肩こり、頭痛、吐き気など多様な形で現れてくると言われています。

2-4.臭気の影響
臭気も室内環境の対応すべき問題としては重要です。人が感知する化学物質による臭気の感知は、化学物質それぞれにより異なり、それらの化学物質の健康に与える濃度との関係で注意が必要です。例えば、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン等では臭気が無くても影響を与える領域に入り、臭気を感じたときには既に室内濃度指針値以上の範囲に入っているものがあります。又、逆に臭気があっても危険でない場合もあります。中には臭気に過敏なため、特定の臭気があるというだけで嫌悪を感じてそこに住めない人もいます。

3.化学物質の室内環境濃度の基準について

シックハウス対策においてはその要因となる化学物質の室内濃度が問題となります。このために、厚生労働省はホルムアルデヒド、トルエン、キシレン等13物質に対して、人が健康に住めるための目安となる室内濃度指針値を設定しています。

〈室内濃度指針値設定物質〉↓枠で囲む
~ココカラ~
ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロルベンゼン、エチルベンゼン、
スチレン、クロルピリホス、フタル酸-n-ブチル、テトラデカン、
フタル酸-2-エチルヘキシル、ダイアジノン、アセトアルデヒド、フェノカルブ
~ココオコマデカラ~

又、これら特定の物質だけではなく揮発性有機化学物質の総量(TVOC)についても目標値を設定しています。
シックハウス問題に関するVOCは、特定の化学物質以外でも健康影響が考えられるため、総合的にTVOCとして管理することが必要と考えられるために提案されたものです。
※TVOC:Total Volatile Organic Compounds(総揮発性有機化学物質)

4.各種建築資材とそこから放出が考えられる化学物質の関係

4-1.各種資材と化学物質
建築資材にはいろいろな化学物質が使用され、住宅工事が完了した後でも微量に室内に放出されるものがあります。通常新築、改築ではいくつかの工事が行われますので、健康影響が現れた場合には、どの様な工事を行ったかの情報を取り、放散される可能性のある化学物質を調べ、どの素材や工事が関係しているかを判断する必要があります。

4-2.塗料の種類と化学物質
塗料は多数の化学物質を使用しており、塗装時及び塗膜になってからの化学物質の放散はそれぞれ異なります。建築用に使用する場合は、その組成物質から放散される物質の人への影響を注意して考え、採用する塗料や塗装方法を注意深く検討し、施工する必要があります。
塗料中に含まれる有機溶剤は、VOCとして特に問題になりますが、実際は溶剤の種類毎に有害性が異なっています。塗料の種類は大別して、溶剤系と水性系に分けられ、それぞれの塗料が含有する有機溶剤量は、下表のようになります。現在では、住宅の内部・外壁用として有機溶剤量が少ないエマルション系塗料が多く使用されています。

〈溶剤系塗料〉↓テーブル
有機溶剤量 塗料の種類
非常に多量 溶剤系シーラー類
多量 ラッカー類、ビニル樹脂系塗料、ウレタン樹脂系塗料
中程度 合成樹脂調合ペイント、アルキド樹脂塗料
非水分散系塗料、低臭非水分散系塗料

〈水性系塗料〉↓テーブル
有機溶剤量 塗料の種類
少量 水溶性系塗料
ごく少量 エマルション系塗料

5.安全な塗装・施工について

5-1.現場塗装と建築資材塗装
建築資材塗装の場合、工場で塗装され充分に塗膜が硬化していれば、建築現場でのVOCの放散は非常に小さいと考えられます。しかし、塗料の種類、素材、塗装仕様、塗装工程、設備条件などにより建築資材からのVOCの放散状況が異なります。工場塗装での焼付乾燥が不充分だったりすると、ホルムアルデヒドが発生したり、塗料中に残存している未反応のモノマーなどが、それらの資材を使用した室内などに放散されることがあります。
現場塗装の場合、VOCの発生が現場で起こる事になり、工場塗装に比べてリスクは大きくなります。塗装時の換気のみならず、塗装後の換気に充分気をつける必要があります。

5-2.新築塗装と改修塗装
新築現場での内装塗装工事は以前に比べ少なくなっています。又、新築工事から入居までに多少時間がとれることから、塗料が原因とされるシックハウス問題は、新築においては少なくなっています。
改修現場での内装塗装工事は新築時に比べると多く、時には人が住んだままで塗装が行われる事もあって、問題が発生しやすいと考えられます。中古の住宅・マンションなどの改修工事は入居までの時間が比較的に短いことが多いため、居住者のVOCへの暴露のリスクが高いと言えます。

5-3.塗料・塗装系の選択
塗料は塗装目的や被塗物の素材、使用される場所などの条件によって塗料の種類、塗装系における塗料の組み合わせ、塗装の方法などが変わります。従来は、品質、コストなどが塗料選択、塗装仕様の採用決定の要点であり、住む人の健康を配慮する事が少なかったように思われます。
シックハウス症候群のように、環境中の比較的低い濃度の化学物質に対してでも健康影響の被害を受ける人がいることを充分認識して塗料選定・施工を行うことが必要になります。

6.塗料、塗装仕様、施工方法の選定

6-1.全般的な注意
1)塗料、塗装仕様などの選定に際しては、品質、コストだけでなく「居住者の健康」を考えることが大切です。
2)居住者又は管理者と塗装仕様等を決める場合には、居住者の状況を事前に充分チェックし、塗装の設計、施工などの決定に際し健康面の配慮に役立てる事が重要です。
3)改修に際し、旧塗膜の剥離、洗浄などを行う必要がある場合には、その工法、使用剥離剤などについて充分安全性を確認する必要があります。
4)新築の場合には、塗装仕様、工期などについて施主と確認し、塗装後入居するまでにどのくらいの期間があるか、又、どのような換気が出来るかなどをチェックし、選定する必要があります。

6-2.塗料、塗装仕様の選定
1)塗装設計時には、使用する塗料の安全性、使用などについて、塗料メーカーが発行するMSDS(化学物質等安全データシート)やカタログなどから、VOCその他有害性物質の含有、有害性情報などを参考に塗料、塗装仕様、施工方法などを選定します。
2)改修には出来る限りエマルション系塗料などの健康影響や臭気影響などが少ない塗料を採用するようにして下さい。
3)塗装時及び塗装後の換気がどのように出来るかを充分考えて、塗料、塗装工程などを決めて下さい。もし、換気が充分出来ない場合には強制換気装置・器具等を持ち込むなどの対応を事前に考えて下さい。
4)外装の場合にも居住者などへの影響が出る場合があります。
溶剤系塗料の使用を考える場合には、建築構造、被塗物基材への溶剤浸透などの問題がないことを確認し、仕様を決めて下さい。又、集合住宅の階段、廊下などの準外部は換気が悪いため配慮が必要です。

7.塗装時・塗装終了後の注意

7-1.室内塗装
1)溶剤蒸気による暴露、臭気対策のために、充分な換気が出来るか確認して下さい。特に窓を開けるなどの自然換気が難しいところでは、換気装置を使用して塗装して下さい。
2)改修など居住者がいる場合に作業を行う場合では、作業を行うに当たって居住者は作業場所に入らない、他の部屋への影響の防止策など、居住者へのVOCなどの暴露を避けるための対策について居住者への理解を求めて下さい。

7-2.外部塗装
1)臭気や溶剤蒸気等の暴露など、近隣者への影響が出ないような養生の確認をして下さい。臭気の強い塗料を使用する場合は特に注意して下さい。
2)溶剤系塗料を使用する際には、出来るだけVOCの放散量を少なくするために、希釈率を守って下さい。
3)室内に臭気や溶剤蒸気等が入らない様、開口部の養生を確認して下さい。

7-3.塗装終了後
1)量は少ないですが塗膜になってからも有機溶剤の放出は続きますので、塗装後にも出来るだけ換気を行うようにして下さい。
2)気温が低い時期などには、塗装後に暖房などを使い室温を上げて塗膜からの有機溶剤の放出を促進することで、その後の居住環境へ放出を少なくする方法も条件により効果が期待できます。

8.ホルムアルデヒド規制について

8-1.ホルムアルデヒドの用途
ホルムアルデヒドは化学工業の原料として用いられ、接着剤、防腐剤、高分子材料材料に用いられています。

8-2.ホルムアルデヒドの人体への影響
刺激性のほか、感作性によるアレルギー疾患を呈し、目、鼻及び喉への刺激、不快感、流涙、くしゃみ、咳、吐き気、呼吸困難で、高度の場合は死に至ることがあります。

8-3.建築基準法等の一部改正する法律について
建築基準法の一部が下記の通り改正され、平成15年7月1日から施行されます。

↓枠で囲む
第28条の2 居室を有する建築物はその居室内に於いて制令で定める化学物質 の発生による衛生上の支障がないよう、建築材料及び換気設備について制令で定める技術的基準に適合するものとしなければならない。

↓枠で囲む
付帯決議 (5)室内環境汚染による健康障害が生ずると認められる化学物質につい ては、全て規制対象とするよう、室内空気中の化学物質の濃度の実態や発生源 発散量等の研究調査を進め、その結果が得られたものから、順次規制対象に加えること。

改正により、ホルムアルデヒドが規制対象物質とされ、換気設備の設置が義務付けられ、及び塗料、接着剤、仕上げ材を含む建築材料の使用を制限されることになります。

〈ホルムアルデヒド規制による塗料の等級区分〉↓テーブル
建材区分(告示案) —– 第3種 第2種 第1種
等級区分記号 F☆☆☆☆ F☆☆☆ F☆☆ —–
居室内での使用可否 無制限 使用面積制限 使用面積制限 使用不可
ホルムアルデヒド放散量
デシケータ法mg/L 0.12以下 0.12~0.35 0.35~1.8 1.8以上
ホルムアルデヒド放散量
チャンバー法μg/㎡h 5以下 5~20 20~120 120以上

1.保護
私たちが生活の中で使用する鉄、コンクリート、モルタル、プラスチック、木材などの素材は、そのままの状態では水、熱、光、塩分といった周囲の環境因子によってさびたり、もろくなったり、分解したりして、素材を損なうことになります。
ところが、これらの素材に塗料を塗ると、その表面に丈夫な被膜をつくって環境因子から保護し、さらに定期的な塗り替えや補修という比較的簡便な方法によって物を何倍にも長持ちさせることができ、省資源や環境安全にも役立つことになります。


日本鋼管(株)福山製鉄所


雪国まいたけ(新潟県)

2.美観
生活環境のカラー化は、都市環境から、身のまわりのインテリアや自動車・鉄道車両・航空機の色彩設計などあらゆるものに及び、現代社会の強いニーズになっています。
塗料は、比較的容易な方法によって、豊かで多彩な色・つや・なめらかさなどの自由な仕上がり感を付与することができ、バラエティのある面白いデザイン効果を生み出すこともできます。たとえば、建築物内外壁の凹凸のある仕上げなどはその代表的なものです。また、色やデザインを変えたい時には簡単に塗り替えることで、気分を一新できるのも塗料の大きな特徴です。


老人養護施設「蛍」(三重県)


日比谷公園小音楽堂

3.特別な機能
塗料は、保護と美観以外に特別な機能を与えることにより、物の価値を高めることができます。特別な機能を付与された塗料は、ハイテク技術分野を含む広い分野に適用され、品質向上、経済性(省力・省資源・省エネルギー)、快適性、安全性、環境安全などの面で新しい時代の流れに沿った社会の進歩とニーズに応えています。
特別な機能を付与した塗料としては右図に示すようなものが考えられます。
生活様式の変化、科学技術の高度化・多様化・新素材の開発・普及などにともない、さらに新しい機能を持った塗料の出現が期待されています。

特別な機能詳細
(以下テーブルは、各リンク)
電気・磁気機能 導電、電磁波シールド、電波吸収、磁性、プリント回路、IC用,帯電防止、電気絶縁
熱化学機能 耐熱、断熱、耐火、太陽熱吸収、示温、熱線反射
光学的機能 蛍光、蓄光、光再帰反射、赤外線反射、紫外線遮断、光電導
機械的機能 破びん防止、潤滑、防水、透温、凍害防止
物理的機能 着氷固着防止、貼紙防止、結露防止、油塵易除去、防滑
生物学的機能 抗菌、防かび、防藻、防虫、防汚、水産養殖、動物忌避
科学的機能 消臭、ガス選択吸収、中性化防止
その他 防音、制振、放射能防御、貼る塗料、カスタマイズ

特別な機能詳細
(以下リストは、各リンク)

・木材防虫防腐塗料
・蓄光塗料
・ネズミ咬害防止塗料
・水道施設用内面防食塗料
・貼る塗料
・高輝度再帰反射路面表示塗料
・偏光性塗料
・特殊蛍光塗料
・抗菌塗料
・構造物・建築物汚染防止塗料
・船底防汚染塗料
・油塵易除去塗料

木材防虫防腐塗料
防虫剤・防腐剤・防かび剤を配合した塗料で、木材に深く浸透し、シロアリやキクイムシから大切な住まいを守ります。

蓄光塗料
昼間に光のエネルギーを塗膜中に蓄え、暗くなるとそのエネルギーを徐々に光として放出します。パールカラーを含め多様な色彩が可能で、夜は長時間にわたり暗闇で光ります。屋外でも使えるので交通事故防止に役立ちます。

ネズミ咬害防止塗料
ネズミの味覚を強く刺激する成分を含んだ塗料を通信ケーブルやガスホース等に塗布することで、咬害による事故を未然に防ぎます。

水道施設用内面防食塗料
私たちの毎日の生活に欠かせない水道水。この水道施設用(浄水場や貯水槽など)の内面にも「塗料」が使用されています。この塗料は、日本水道協会規格に合格するとともに、人体に有害な重金属は一切含んでいません。そして、安全性の高い塗膜とともに優れた耐久性で、清潔な水道水を各家庭に届けています。

貼る塗料
現場での塗装作業が不要な「貼る塗装」は、施工が容易で、デザイン性に優れています。

高輝度再帰反射路面表示塗料
路面標識はドライバーにより良い運転環境を提供しています。夜間雨天時にもラインを視認できる高輝度工法が開発され、交通安全に貢献しています。

偏光性塗料
見る角度によって色が連続的に美しく変化し、従来のイメージからさらにデザイン性を高めた、新意匠性塗料。

特殊蛍光塗料
特殊蛍光塗料で壁に絵を描くと、通常照明の時はただの白色ですが、ブラックライトを照射すると幻想的で鮮やかな絵が現れます。

抗菌塗料
MRSA(メチシリン耐性黄色ぶどう球菌)による病院内感染や病原性大腸菌O-157による食中毒が清潔指向に拍車をかけました。抗菌塗料も、実は病院内感染対策の一つとして開発された製品。その抗菌機能は、塗料に添加された抗菌剤の働きによるものです。

構造物・建築物汚染防止塗料
汚れは、汚染物質が塗膜に付着し、時間の経過とともに塗膜表層に染み込むために起こります。汚染防止の基本機能は、汚染物質が「付きにくい」「染み込みにくい」「取れ易い」ことであり、こうした性能を備えた新しい塗料が開発されています。

船底防汚染塗料
海中生物が船底に付着すると、スピード低下など船舶の運航上に支障をきたします。この生物付着を防ぐため、従来は船底部に有機錫配合の塗料が塗られていました。この塗料は高性能ではあったものの、海洋環境にも悪影響を及ぼすことから、わが国では世界に先がけてこの使用を禁止し、現在は錫を含まない塗料が使われています。

油塵易除去塗料
油塵易除去塗料を塗布するとテフロン加工を施したフライパンのように油が粒状になって、頑固な油汚れも簡単に除去することができます。