塗料の役割と効用

1.保護
私たちが生活の中で使用する鉄、コンクリート、モルタル、プラスチック、木材などの素材は、そのままの状態では水、熱、光、塩分といった周囲の環境因子によってさびたり、もろくなったり、分解したりして、素材を損なうことになります。
ところが、これらの素材に塗料を塗ると、その表面に丈夫な被膜をつくって環境因子から保護し、さらに定期的な塗り替えや補修という比較的簡便な方法によって物を何倍にも長持ちさせることができ、省資源や環境安全にも役立つことになります。


日本鋼管(株)福山製鉄所


雪国まいたけ(新潟県)

2.美観
生活環境のカラー化は、都市環境から、身のまわりのインテリアや自動車・鉄道車両・航空機の色彩設計などあらゆるものに及び、現代社会の強いニーズになっています。
塗料は、比較的容易な方法によって、豊かで多彩な色・つや・なめらかさなどの自由な仕上がり感を付与することができ、バラエティのある面白いデザイン効果を生み出すこともできます。たとえば、建築物内外壁の凹凸のある仕上げなどはその代表的なものです。また、色やデザインを変えたい時には簡単に塗り替えることで、気分を一新できるのも塗料の大きな特徴です。


老人養護施設「蛍」(三重県)


日比谷公園小音楽堂

3.特別な機能
塗料は、保護と美観以外に特別な機能を与えることにより、物の価値を高めることができます。特別な機能を付与された塗料は、ハイテク技術分野を含む広い分野に適用され、品質向上、経済性(省力・省資源・省エネルギー)、快適性、安全性、環境安全などの面で新しい時代の流れに沿った社会の進歩とニーズに応えています。
特別な機能を付与した塗料としては右図に示すようなものが考えられます。
生活様式の変化、科学技術の高度化・多様化・新素材の開発・普及などにともない、さらに新しい機能を持った塗料の出現が期待されています。

特別な機能詳細
(以下テーブルは、各リンク)
電気・磁気機能 導電、電磁波シールド、電波吸収、磁性、プリント回路、IC用,帯電防止、電気絶縁
熱化学機能 耐熱、断熱、耐火、太陽熱吸収、示温、熱線反射
光学的機能 蛍光、蓄光、光再帰反射、赤外線反射、紫外線遮断、光電導
機械的機能 破びん防止、潤滑、防水、透温、凍害防止
物理的機能 着氷固着防止、貼紙防止、結露防止、油塵易除去、防滑
生物学的機能 抗菌、防かび、防藻、防虫、防汚、水産養殖、動物忌避
科学的機能 消臭、ガス選択吸収、中性化防止
その他 防音、制振、放射能防御、貼る塗料、カスタマイズ

特別な機能詳細
(以下リストは、各リンク)

・木材防虫防腐塗料
・蓄光塗料
・ネズミ咬害防止塗料
・水道施設用内面防食塗料
・貼る塗料
・高輝度再帰反射路面表示塗料
・偏光性塗料
・特殊蛍光塗料
・抗菌塗料
・構造物・建築物汚染防止塗料
・船底防汚染塗料
・油塵易除去塗料

木材防虫防腐塗料
防虫剤・防腐剤・防かび剤を配合した塗料で、木材に深く浸透し、シロアリやキクイムシから大切な住まいを守ります。

蓄光塗料
昼間に光のエネルギーを塗膜中に蓄え、暗くなるとそのエネルギーを徐々に光として放出します。パールカラーを含め多様な色彩が可能で、夜は長時間にわたり暗闇で光ります。屋外でも使えるので交通事故防止に役立ちます。

ネズミ咬害防止塗料
ネズミの味覚を強く刺激する成分を含んだ塗料を通信ケーブルやガスホース等に塗布することで、咬害による事故を未然に防ぎます。

水道施設用内面防食塗料
私たちの毎日の生活に欠かせない水道水。この水道施設用(浄水場や貯水槽など)の内面にも「塗料」が使用されています。この塗料は、日本水道協会規格に合格するとともに、人体に有害な重金属は一切含んでいません。そして、安全性の高い塗膜とともに優れた耐久性で、清潔な水道水を各家庭に届けています。

貼る塗料
現場での塗装作業が不要な「貼る塗装」は、施工が容易で、デザイン性に優れています。

高輝度再帰反射路面表示塗料
路面標識はドライバーにより良い運転環境を提供しています。夜間雨天時にもラインを視認できる高輝度工法が開発され、交通安全に貢献しています。

偏光性塗料
見る角度によって色が連続的に美しく変化し、従来のイメージからさらにデザイン性を高めた、新意匠性塗料。

特殊蛍光塗料
特殊蛍光塗料で壁に絵を描くと、通常照明の時はただの白色ですが、ブラックライトを照射すると幻想的で鮮やかな絵が現れます。

抗菌塗料
MRSA(メチシリン耐性黄色ぶどう球菌)による病院内感染や病原性大腸菌O-157による食中毒が清潔指向に拍車をかけました。抗菌塗料も、実は病院内感染対策の一つとして開発された製品。その抗菌機能は、塗料に添加された抗菌剤の働きによるものです。

構造物・建築物汚染防止塗料
汚れは、汚染物質が塗膜に付着し、時間の経過とともに塗膜表層に染み込むために起こります。汚染防止の基本機能は、汚染物質が「付きにくい」「染み込みにくい」「取れ易い」ことであり、こうした性能を備えた新しい塗料が開発されています。

船底防汚染塗料
海中生物が船底に付着すると、スピード低下など船舶の運航上に支障をきたします。この生物付着を防ぐため、従来は船底部に有機錫配合の塗料が塗られていました。この塗料は高性能ではあったものの、海洋環境にも悪影響を及ぼすことから、わが国では世界に先がけてこの使用を禁止し、現在は錫を含まない塗料が使われています。

油塵易除去塗料
油塵易除去塗料を塗布するとテフロン加工を施したフライパンのように油が粒状になって、頑固な油汚れも簡単に除去することができます。